奈良県の中和地域に位置する桜井市。市内には、さまざまな時代の古墳が残されています。そのことからヤマト王権の中心的な地域であったと考えられ「ひみこの里・記紀万葉のふるさと」として紹介されています。また、日本最古の神社といわれる三輪の大神神社、初瀬の長谷寺、多武峰の談山神社など、由緒ある社寺も数多くあります。
桜井と言えば「山の辺の道」。奈良盆地の東南、三輪山のふもとから東北部の若草山に並ぶ春日山のふもとまで、盆地の東端を山々の裾を縫うように通る古道は、全長約16キロ。JR桜井線が、西側にほぼ並行して走っているので、自分の体力にあった距離を歩くことができます。
JR・近鉄桜井駅を降り、道標に従って歩いて行くと、初瀬川のほとり、金屋河川敷公園の堤の上に高さ3.8mの「仏教伝来の地」の碑があります。このあたりは、昔、海柘榴市(つばいち)とよばれ、大陸からの船が大阪(難波津)から大和川をさかのぼって到着する船着き場があった場所。欽明天皇の時代、百済からの使節が上陸し仏教の信仰を進めたといわれています。
初瀬川を渡り北へ。道から少し離れたところに建つのが海柘榴市観音堂。海柘榴市は、万葉集をはじめ日本書紀、枕草子にも登場するわが国最古の市。現在の三輪山のふもとにある金屋周辺をさします。恋の歌をかけあう歌垣の舞台として知られていましたが、現在は、金屋集落の観音堂にその名前を残しています。そこからしばらく行くと、収蔵庫に納められた金屋の石仏が格子ごしに拝観できます。高さ約2メートル、幅83.5センチの泥板岩に釈迦如来と弥勒如来像が彫られ、いずれも重要文化財に指定されています。
581年、聖徳太子が建立したと伝わる平等寺を過ぎると、酒の神様として知られる大神神社へとたどりつきます。三輪山の杉を集めて造られた杉玉は、各地の造り酒屋に新酒ができたことを告げるシンボルとして授与されます。
大神神社を過ぎ、平安時代に玄賓僧都が隠棲したと伝えられる玄賓庵から三輪山を御神体とする大神神社の摂社・檜原神社へ。鳥居の向こうに、遠く二上山が見渡せます。ここには、古人に想いを馳せながら、四季折々、自然を感じることができる道が残されています。
桜井市には、山の辺の道だけでなく、伊勢街道や磐余の道、多武峯街道など様々な場所に60以上もの記紀万葉歌碑が、木陰や草むらのなかにさりげなく、ひっそりと佇んでいます。詠み人だけでなく、誰の揮毫なのかを探すのも楽しみのひとつ。桜井市発行のパンフレットなどで確認しながら歩いてみてください。
古事記の中で倭建命が詠ったとされる「やまとは くにのまほろば たたなづく 青がき 山ごもれる 大和しうるわし」の歌碑は、2箇所に設置されています。一つは、大神神社の祈祷殿前。黛敏郎氏の書で五線譜にのせられためずらしい歌碑です。もう一つは、檜原神社から少し行ったところの井寺池のほとり。大和盆地が一望できるビューポイントで、川端康成の書です。
http://www.sakurai-kanko.com/%E4%B8%87%E8%91%89%E6%AD%8C%E7%A2%91/
桜井駅から地図を見ながら南へ歩いていくと「木」の香りが。見回すとそこここに、材木店が。大和平野と山間部の接点に位置した桜井が木材の町として発展したのは明治時代の後期からだとか。桜井市は、市内に木材関連の業者が500軒もあるという材木のまちでもあります。
「木」を削ったなんとなく懐かしい香りを楽しみながら、歩いていくと石碑に「安倍文殊うら道」の文字が。そこからしばらく歩いていくと、立派な門があり、ここが正式の参道です。
参道を歩いていくと、本堂と、金閣浮御堂と特別史跡の「文殊院西古墳」があります。この古墳は、7世紀に造られたものとは思えない美しい切り石。花崗岩がきれいに加工され、左右対称に揃えられ、飛鳥の石舞台とはまったく違った印象です。
安倍文殊院は、645年、安倍倉梯麻呂が創建した安倍寺の後身といわれています。安倍氏の氏寺として阿倍仲麻呂や平安時代に活躍した陰陽師・安倍晴明ゆかりの地として知られています。
本尊は学問と知恵が授かる文殊菩薩。座高2メートルにおよぶ大きな像で、平成23年、文化財の大修理を終えました。全長7mの獅子像にまたがった姿が文化財用のやわらかいLEDの光に照らしだされています。
自転車の魅力は移動手段として便利であるということだけでなく、地域がもつ有形・
無形の魅力を五感で味わえることではないでしょうか。
今回のシンポジウムでは、自転車の旅だからこそ伝えられる「地域の魅力」とは、
そしてその「見せ方」、魅力発信に携わる「人」の役割について考えたいと思います。
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