三重県の西部、伊賀地域に位置する名張市は、江戸時代、名張藤堂家の城下町として栄えた町。名張藤堂家は、織田信長の重臣丹羽長秀の三男で藤堂高虎の養子となった高吉に始まり、寛永13年(1636)以来、名張に屋敷を構えました。
近鉄名張駅から歩いて10分ほどのところに建つ名張藤堂家邸は、城下町として栄えた頃を偲ばせる建物。津藩藤堂家の一門で、11代にわたり名張に居を構えた藤堂宮内家の屋敷跡です。現在の建物は、1710年、名張大火で焼失した後、再建された殿館の一部。焼失した最初の屋敷については、資料などが残っていないため規模、構造などは不明ですが、発掘調査では、建物の礎石配置の一部が、地表下約1メートルで確認されています。
再建された建物は、藤堂家に伝わる屋敷図によると、記載された畳数だけでも1,083畳にもなる広大なものでした。明治初年に建物の大部分が取り壊されましたが、「御西」と称された「中奥」「祝間」「圍」などの私的な生活を送る建物の一部と正門(寿栄神社へ移築)が残されました。近世武家の住まいの遺構として貴重なもので名張藤堂家から寄贈された「豊臣秀吉朱印状」「鉄唐冠形兜・鉄一の谷形兜」「朱具足」「備前無銘刀」「藤堂高吉公一代記」「羽柴秀吉・丹羽長秀の書筒」など学術的にも貴重な文化財とともに公開されています。
http://www.city.nabari.lg.jp/s061/020/000/050/201502051899.html
大阪・奈良方面と伊勢を結ぶ初瀬街道。大阪から桜井の初瀬(長谷寺)を経て、名張、松阪市六軒から伊勢へといたります。現在の国道165号を通るこの道は、壬申の乱の時、大海人皇子が名張へとたどった道。また、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えた斎王が伊勢へと赴いた道でもあります。
初瀬街道の宿場町として栄えた名張旧町には、昔ながらの家並みが残されています。まちを歩くと、家の軒先にある「まちかど博物館」の看板が目をひきます。
幕末の有名な生(いき)人形師 安本亀八作の「角田半兵衛夫婦坐像」(当家三代目)、約200年前の「大名火消し装束」、明治時代の「観光絵はがき」等、先祖伝来の品々を、築170年の町家座敷に展示する「はなびし庵」、栗羊かんを独特の手法で作りつづけて150年の和菓子の老舗「栗羊かん博物館 大和屋」、大正3年創業の老舗料亭で、古くから文人達に愛され、江戸川乱歩や松本清張が記した色紙などが残る「文人ゆかりの館 清風亭」など、個人のコレクションや伝統の技、手仕事など、仕事場の一角や個人のお宅の一部を「博物館」として見学することができる施設です(要予約箇所有り)。
http://www.kankou-nabari.jp/special2/machikado/index.html
造り酒屋での利き酒や、昔ながらのお菓子を楽しみながら歩いていくと、虫籠窓や袖卯建を備える典型的町家・旧細川邸が見えてきます。江戸末期から明治初年に、薬商細川家の支店として建てられたもので、今では歴史的町並み保存整備の拠点施設「やなせ宿」として活用されています。
敷地内にある物産棟は、ワンデイシェフとして、料理好きの人を募って、行くたびに個性的な人との出会いと食事を楽しめるユニークな飲食施設になっています。
http://www.yanase-shuku.com/
ここ名張は、名探偵・明智小五郎と少年探偵団が活躍する「怪人二十面相」など、日本の探偵小説を創始した作家、江戸川乱歩が生まれたところ。江戸川乱歩(本名平井太郎)は 明治27年10月21日、名張で生まれました。生後まもなくこの地を離れた乱歩は、大正5年早稲田大学を卒業後、大正12年「二銭銅貨」を発表。それから、心理試験、人間椅子、パノラマ島奇談など数多くの傑作を発表しました。
京都で小路(こうじ)・路地(ろじ)などと呼ばれる民家や商家が建てこんだ細い路地をここでは「ひやわい」と呼んでいます。「ひやわい」とは陽のあたるあわいさ(間)が語源とか。生活空間の中に溶け込んでいくような独特の雰囲気を醸し出しています。
人一人がかろうじて通ることができるほどの細い迷路のようなひやわいを抜けるとどんな世界があらわれるのか。広い場所に出たと思うとそこには江戸川乱歩の生家跡の碑が。江戸川乱歩生誕の地らしく、ちょっとミステリアスな町歩きが楽しめます。
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今回は、猿沢の池から高円山の麓を歩き、玄昉の首塚と言われる塔頭や真備の墓と言われる吉備塚古墳、そして新薬師寺を回り、古代の人々の祈りと、そこから生まれた中世の伝説を追っていただきます。
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