大阪府の北部に位置し、南北に長く5市1町に囲まれた茨木市。実は日本でも有数の古墳群地帯で、古墳時代の初期から末期までの各時代の古墳が現存しています。また、中世以降、市の中央部を東西に走る西国街道の往来がさかんとなり、人・モノ・情報が集まりました。隠れた歴史スポットをめぐるまち歩きはいかがですか。
西国街道は、江戸時代の山陽道にあたり、大坂を経由せず、西国へ抜ける脇街道として繁栄しました。市街化にともない、昔日の面影は薄れていますが、そこ、ここにかつての街道の名残を見つけだすことができます。
JR茨木駅から阪急バスを利用し「宿川原」へ。バス亭から西へ少し歩くと郡山宿本陣がある宿川原に入ります。郡山宿は、京都と西宮を結ぶ西国街道のほぼ中央に位置し、江戸時代には多くの西国大名が、参勤交代時に本陣へ休泊した記録が宿帳に残されています。昭和23年に国指定史跡に指定された郡山宿本陣は、享保3年(1718年)に類焼にあい、3年後の享保6年(1721年)に再建されて以来、およそ290年間そのままの規模で残されています。御成門、母屋、納屋(仮牢)、土蔵3棟、茶室1棟があり、母屋には上段の間、湯殿、槍の間、駕籠の間、元帳場、カマヤ、本陣家族の居住部などが残ります。また、御成門のそばにあった椿の木が毎年春に五色の花を咲かせたころから、「椿の本陣」とよばれ、人々に親しまれています。
今も当主が住まれていますので、見学は事前予約が必要です。
椿の本陣から国道171号に出て豊川橋を渡り、豊川橋北信号を横断。のどかな田園風景の中を歩いてしばらくいくと「川端康成旧跡」の石碑があります。1968年、日本で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成は、3歳から18歳までここ茨木で過ごしました。幼いころ両親と、次いで祖母、姉、祖父と肉親との死別を経験します。その淋しさを埋めたのが濫読ともいえる読書でした。そして、旧制茨木中学2年生の頃には作家を志し、創作や雑誌への投稿も始めています。
茨木中学校卒業後上京し、旧制第一高等学校、東京帝国大学へと進学、大学生の時には菊池寛創刊の雑誌「文藝春秋」の編集を担当し、ひたすら作家への道を進み、『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』など多くの作品を発表、日本文学を海外に紹介することにも力を尽くしました。
JR茨木駅と阪急茨木市駅のほぼ中央に位置する茨木神社。1月の十日戎、7月の夏祭り、大晦日の除夜祭など、地域の氏神として多くの参拝客で賑わいます。この神社の東門は、元は茨木城の搦手門であったといわれています。
建武年間、楠正成によって築かれたという茨木城。16世紀後半、豊臣秀吉の直轄地となり、関ヶ原の戦いの後、片桐且元が城主となりました。
豊臣秀吉は、織田家の重臣、柴田勝家を賤ケ岳の合戦で破ったことで、信長の後継としての地位を決定づけました。この戦いで、特に抜群の働きを示し、恩賞を受けたのが、福島正則、加藤清正、片桐且元など「七本槍」と呼ばれる武将たち。彼らは、子飼いの武将として活躍し、秀吉を助けましたが、秀吉の死後、石田三成との確執などから、豊臣家を思いつつ、徳川の傘下へと入っていきます。
現在、茨木城の遺構はほとんど残されていません。JR茨木駅から徒歩約12分、城郭があったあたりを散策すると、茨木神社の搦手門のほか、茨木小学校東側には櫓門が原寸大で復元されています。また、大手町、片桐町などの町名や町並みに残るT字路に城下町の名残が偲ばれます。
市の北部。「隠れキリシタンの里」として知られる茨木市千提寺・下音羽地区は、かつてキリシタン大名として有名な高槻城主・高山右近の領地(1573~85年)でした。この地で、およそ400年間にわたり信仰を守りとおし、伝えられてきたキリシタン遺物があります。現在は神戸市立博物館に所蔵されている教科書でも有名な「フランシスコ・ザヴィエル画像」や「マリア十五玄義図」が千提寺の民家の「あけずの櫃」から発見されました。他にも「天使讃仰図(銅版画)」、「キリスト磔刑像」、「キリスト教の聖品(メダル)」などがあり、これらの遺物を集めて、1987年、茨木市立キリシタン遺物史料館が開館しました。山あいの棚田は美しく、当時の原風景を思いおこすことができます。
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