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歴史コラム

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第51回 西宮市甲陽園界隈を歩く(兵庫県西宮市)

豊かな歴史文化と恵まれた環境

兵庫県西宮市は、関西住みたい街(駅)ランキング4年連続トップの「西宮北口」やベスト10常連の「夙川」を抱え、「住んでみたいと思う行政市区」でも4年連続トップとなる人気の都市だ。(出所:リクルート住まいカンパニー)
古くは西宮(えびす)神社の門前町であり、西国山陽両街道の接点の宿場町として有名であった。西宮という言葉が史上の文献にあらわれたのは、鳥羽天皇の1119年であるが、地名の源はよくわかっていない。西宮は廣田神社あるいは西宮神社を指していうのだが、それは東に位置する昔栄えた津門(つと)から見てという説もある。
市内の甲子園、昭和園※、甲風園、甲東園、甲陽園、苦楽園、香櫨園は西宮七園(にしのみやななえん)といわれ、関西を代表する高級住宅街として知られている。いずれも大正から昭和初期にかけて交通・環境とも恵まれた場所に開発されたもので、阪神間モダニズム文化圏を代表するブランド住宅街を形成している。
歴史文化の豊かさに加えて、山と海にはさまれて自然にも恵まれている。関西の二大都市である大阪と神戸の間に立地、阪急・JR・阪神の鉄道三線が並走し、ヒト・モノ・カネ・情報が絶えず活発に交流。日本酒やスイーツに代表されるご当地グルメも有名である。
※現在、「昭和園」の地名は存在しないものの、阪急電鉄西宮北口駅の北西にある「北昭和町」・「南昭和町」がそれに該当する。

甲山(かぶとやま)で四国八十八か所めぐり

阪急電鉄甲陽線は夙川駅から北へ苦楽園駅、甲陽園駅の三駅を結ぶ単線。甲陽園は甲山の南麓に位置し、大正時代にはクラブ、遊園地や撮影所、温泉や高級料理旅館が軒をつらね賑わったといわれているが、今は閑静な住宅地だ。
駅改札を出て右へ百メートル程進み、スイーツの有名人気店ツマガリを過ぎたあたりで左に進むとすぐに傾斜のきつい登り坂になる。道標を頼りに20分程坂道を登り切ると、道の左右に風化した石仏がいろいろと目に入ってくる。


甲山八十八か所石仏
これらは四国八十八か所を模したミニ巡礼地として1792年から6年かけてつくられたものの一部。当時、一般庶民にとって四国お遍路さんまでの道程はとても遠いものだった。そこで、誰でも四国巡礼を体験できるようにと住職が四国八十八か所の砂を持ち帰り、それらを神呪寺(かんのうじ)境内に敷いて四国八十八か所のミニチュアを配し、一気に巡礼地をめぐることができるようにしたもの。全行程約2キロメートル余りで、現在も、門前の尾根筋に順を追って並んでいる。
そこからさらに北へ数分進むと、お椀を伏せたような丸い形をした甲山(標高約309メートル)を背にした西宮の名刹「神呪寺」の山門(仁王門)が目に飛び込んでくる。

神呪寺山門(仁王門)
寺号の「神呪寺」は「神を呪う」という意味ではなく、般若心経にある神呪(じんしゅ)で、「神秘なる呪語」「真言(仏様のお言葉)」を意味する。甲山を神の山とする信仰があり、この寺を神の寺(かんのじ)としたことによるという。
別名「甲山大師」ともいい、831年に淳和天皇妃真井御前(まないごぜん)に弘法大師が力を貸して建立した寺だといわれており、地元では「お大師さん」の名で親しまれている。
日本三如意輪観音に数えられる半跏思惟の「如意輪観音座像」をはじめ、「聖観音立像」「不動明王坐像」「弘法大師坐像」の四体が国指定の重要文化財となっている。なかでも如意輪観音は秘仏として五月十八日の御開帳の日しか拝観できない。
百段程ある階段を登りつめてお参りした後は、眼下に広がる大阪平野の素晴らしい風景を楽しめる。宝塚から大阪方面までさえぎるものはなく、晴れた日は大阪の高層ビル群の向こうには生駒の山並みも見ることができる。

古代信仰が息づく越木岩神社


甑岩

甲陽園駅から西の方角へアップダウンする道を歩くこと約15分。鳥居をくぐるとそこはうっそうとした、ヒメユズリハを主体にした暖帯林の社叢(しゃそう)が続いている。祭神はえびす大神であり、「北の戎」と呼ばれる福の神が祀られている。
拝殿の脇道を上り進むと、神の宿るという巨大な「甑岩(こしきいわ)」が迎えてくれる。高さ約十メートル、裾回り約五十メートルの大きな花崗岩で、所謂古代信仰の時代、当地から北山・目神山や六甲山を一大霊場とした磐座(いわくら)・磐境(いわさか)祭祀のランドマーク・霊岩としてこの「甑岩」が祀られたようだ。
岩の形が酒米などを蒸す「こしき」に似ているところからこの名が生まれ、岩上に雑木が生じた姿より、現在の越木岩に転じたものといわれている。
この大きな岩を大阪城の築城に際して運び出そうとしたが、工事にかかると突如黒煙を吹き出し、ついに運び出すことができなかったという伝説がある。


越木岩神社鳥居

越木岩神社拝殿

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