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歴史コラム

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第61回 日本庭園の変遷を巡る③(平安時代/宇治市「平等院庭園」)

寝殿造り庭園

吉田兼好が『徒然草』の中で「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と記しているように、はるか昔より日本の夏はかなり蒸し暑い。そんな夏を少しでも涼しく過ごそうと工夫された貴族の住宅が「寝殿造り」の館である。建物は南側を大きく開け、風通しをよくし、さらに邸内に水を引き、涼をとっている。
敷地(標準は約120メートル四方)を築地塀で囲み、北半分に寝殿を中心とした建築群、南半分に池泉庭園を配し、その中間にある寝殿の前(南)には儀式のための白砂の広場が設けられた。
寝殿の両脇からは池泉に向けて回廊が伸び、その先に泉殿(いずみどの)・釣殿(つりどの)が池に面して建てられ、池泉には中島が築かれ、橋が架けられた。
池の水源は多くが屋敷の東側に求められ、そこから細い水路が寝殿や回廊の下を通り池に流れ込んでいた。その曲線状の水路を遣水(やりみず)という。
貴族たちは池泉に龍頭鷁首(りょうとうげきしゅ;船頭に龍と鷁という水鳥を飾った船)の船を浮かべ、詩歌管弦(しいかかんげん)などの船遊びを楽しんだという。
この寝殿造りの建築と一対をなす「寝殿造り庭園」の様式は、藤原氏による摂関政治が全盛期を迎える平安時代中期(11世紀後半の頃まで)には確立されたが、建物や庭園で現存するものはなく、文献・絵画史料などから伺い知ることができるのみである。
平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば、寝殿造りの庭の特徴は、大自然の風景を心に描き、その縮景を造ることであると書かれている。また、庭園の基本となる石の組み方や滝の種類なども記されていて、庭園文化がこの時代に確実に根付いたことを物語っている。

浄土式庭園の出現

仏が住む苦しみ欲望等のない世界を仏教では浄土と呼ぶ。仏は各々の浄土に住み、阿弥陀如来の浄土が極楽浄土である。日本における浄土信仰は飛鳥時代から見られ、平安時代には比叡山延暦寺が浄土信仰の中心であった。
平安中期、浄土信仰こそが末法思想にいう末法に対応しうる宗教であるとの組織的宣伝がなされ、僧、貴族の間で広く信じられた。末法思想とは、釈迦入滅後の年月の経過により正しい仏教の教えが衰微し、やがて人がいかに修行しても悟りがなくなり、正しい行いもなくなっていく末法に入るという思想である。
その中心的役割を果たしたのは比叡山延暦寺の僧源信で、「欣求浄土(ごんぐじょうど)、厭離穢土(おんりえど)」、すなわち、人の住む穢れた娑婆世界を厭(いと)い捨て去り、ひたすら阿弥陀如来に祈願すれば、死後、西方極楽浄土で救われると説いた。
貴族たちは、寝殿造りの屋敷内に阿弥陀堂を建て、そこに阿弥陀如来を安置した。阿弥陀如来は西方浄土に住むとされているから、阿弥陀堂は池の西側に配され、対岸となる東側から阿弥陀様を遥拝した。こうして出来上がったのが浄土式庭園である。
浄土式庭園は京都を中心に数多く造られたが、宇治の地に往時の姿を今に留めている平等院庭園以外で現存するのは、京都の浄瑠璃寺庭園、平泉の毛越寺(もうつうじ)庭園、福島県の白水(しらみず)阿弥陀堂のみである。
浄土信仰は中国大陸から伝わったもので、中国の敦煌遺跡には浄土の世界を描いた壁画がいくつも残されている。日本の浄土式庭園もそれらの絵から影響を受けたと思われる。しかし、中国大陸や朝鮮半島では同類の庭園はこれまでに発見されておらず、浄土式庭園が日本独自様式の可能性もある。


平等院庭園:阿宇池の東から鳳凰堂の阿弥陀如来坐像を拝する。

平等院庭園

阿弥陀堂(鳳凰堂)の美しい姿で知られる平等院は、藤原頼道が父道長から受け継いだ宇治川西岸の別荘宇治殿を寺に改めたものである。落慶法要が行われたのは、末法に入るとされた年の翌年1053年であった。末法の世を迎え、現世への絶望感が色濃く漂う世相の中、貴族の間では西方浄土に坐す阿弥陀如来に祈願すれば必ず救われるという浄土信仰が流行した。頼道はその願いを込めて、池の西の中島に阿弥陀堂(鳳凰堂)を建立し、そこに阿弥陀如来を設置した。寺院造営もまた極楽浄土のための修行とみなす信仰に基づいて、現世に極楽浄土を築くことで自己の極楽往生を祈願したのである。
池の中島に建てられた鳳凰堂は、あたかも極楽の宝池に浮かぶ宮殿のようにその美しい姿を水面に映し出し、その神々しい姿は西方極楽浄土を象徴している。北側の反橋(そりばし;この世とあの世「浄土」との結界に架けられる)と平橋(ひらばし)は近年復元されたものであるが、本尊の阿弥陀如来像(国宝)は大仏師定朝(じょうちょう)の最高傑作である。壁面の雲中供養菩薩像(国宝)は保存のためその一部はミュージアム鳳翔館に展示されている。鳳凰堂前の石燈籠は平等院型燈篭として名高い。鳳凰堂が建つ中島や池の汀に洲浜が復元され、平安時代の日本庭園の趣が見事に甦っている。


平等院庭園:北側廊反橋、平橋側



■観光情報はこちらから
宇治市観光情報 http://www.kyoto-uji-kankou.or.jp/

■アクセス
平等院へのアクセス http://byodoin.or.jp/ja/guide.html

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