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歴史コラム

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第62回 日本庭園の変遷を巡る④(鎌倉時代〜室町時代/京都市「西芳寺庭園」)

寝殿造りから書院造りへ

貴族階級が国を支配した平安時代に対し、鎌倉時代は自ら耕した農地の所有権を武士が主張し、国を動かすようになり、武家の隆盛と軌を一にして禅宗が隆盛する。こうした社会の変動は人々の生活様式や宗教、芸術にも深い影響を及ぼした。
武家政権の樹立とともに鎌倉が政治の中心となるが、庭園の文化の中心は依然として京都にあった。建築様式では、平安時代の寝殿造りから今日の和風住宅の基礎となる書院造りへと変わっていくが、寝殿造り庭園の様式は衰退に向けた変容を見せつつも存続し、郊外の景勝地に別荘を営み庭園を築くという文化もまた有力貴族を中心に続いていく。
寝殿造りがいわばワンルーム様式であるのに対し、書院造りは内部をいくつかの独立した部屋に分け、各部屋に畳を敷き、床の間や付書院などの付属施設を設えた。
それに伴い庭園の様式は、池泉舟遊式の要素を残しつつも池の周りを回遊する池泉回遊式へと変わっていった。回遊式庭園は池の周囲に苑路を設け、さまざまな景の転換を工夫する。そのため池泉の形は出島を多くするなどしてかなり複雑になった。
社会の中心となった武士階級は、中国から新たにもたらされた禅の教えに帰依するようになり、禅的修行のひとつとして、庭園内を回遊しながら思索することを好んだ。また、書院の発展は、部屋から見る座視鑑賞式の庭を生み出していった。

禅宗様庭園西芳寺


湘南亭

この時代の庭園をリードしたのは禅僧であった。その一人に、鎌倉末から室町初期の南北朝時代に当代随一の禅僧にして作庭にも傑出した臨済宗の禅僧・無窓国師がいる。彼は各地を遍歴しながら公案(禅問答の問題)を主題にした庭を造った。代表的な庭園として、岐阜県多治見市の永保寺や京都の西芳寺、天龍寺などがある。
疎石による眺望を活かした構成や石組などの優れた造形は、以降の庭園の一つの規範となり、庭園の構成やデザインにも大きな影響を及ぼす。
現在、苔寺の名で親しまれている西芳寺は、奈良時代に行基が開いたという伝承をもつ古刹で、寺域は洪隠山(こういんざん)という山の麓にある。飛鳥時代から太子作の阿弥陀像が祀られたという伝承があり、当初の名称であった「西方寺」が示すように阿弥陀如来を本尊とする西方浄土の寺であったが、無窓が入寺した当時は浄土宗のふたつの寺に分かれていた。無窓はそれをひとつに統合し、浄土宗から禅宗に改め、建築や庭園も造り直した。
往時の様子が当時の貴族や僧侶等が残した見聞記などの文献資料から窺える。それらによると、無窓は下の平坦地に池泉庭を、山の傾斜地に枯山水庭を造り、上下二段の庭園とした。


龍門瀑(枯滝石組の全体)
下段では、従来の園池を基に西方寺川の水を導入した黄金池(おうごんち)が新たに整えられ、その周囲には瑠璃殿、湘南亭、潭北亭(たんほくてい)など、禅の公案に基づく禅風の建築を配すとともに松のほか多くの花木が植栽され、華麗な景観を見せていたという。
上段の枯山水には、山の斜面を利用して三段の枯滝(ころう)を組み上げた。この石組は鎌倉時代に生まれた新しい滝石組で龍門瀑(りゅうもんばく)といわれる。鯉が激流を上り龍に化すという中国の故事「登龍門」に因んだものだ。一番下の滝を上がったところに龍となる鯉の鯉魚石(りぎょせき)を中心とした滝石組で、一説によれば鎌倉時代中期の南宋から渡来した禅僧、蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が初めて庭の中で表現したといわれている。
蘭渓の禅に影響を受けた無窓国師はとりわけ龍門瀑の石組を好んだようだ。西芳寺の龍門瀑は現存最古のものであり、それ以降の禅の庭に大きな影響を及ぼした。


黄金池

潭北亭(たんほくてい)

苔寺への変遷

西芳寺は応仁の乱で焼失し、江戸時代には2度に渡る洪水により荒廃した歴史がある。上段の枯山水の庭が荒廃して苔で覆われるようになるのはその頃からのようで、今ではこの庭園を埋め尽くす苔の種類は100種を超えるといわれている。
苔むした庭の見え方は一様ではない。光の状態によって、ある場所では新緑の絨毯のようでもあり、雪の結晶のようなパウダー状にも、あるいは、配された石を包み込む粘性のある生き物のようにも見える。
無窓の作庭当時、池の中島の表面は白砂で周囲に護岸石組が組まれていたが、今は苔に覆われ一部の石組しか見られない。現存する建物も、江戸時代初期に千利休の女婿・少庵(しょうあん)が再建したといわれている湘南亭を除いて明治時代以降のものである。湘南亭と潭北亭の名称は無窓の命名によるが、建物の規模も位置も無窓の時代とは異なる。池泉庭苔寺とよばれる庭園に関していえば、厳密には夢窓疎石の意図した庭そのものではなく、当初の建物や植栽とあいまった華麗な庭園の姿は遥か過去のものとなってしまった。



■観光情報はこちらから
京都市観光情報 http://kanko.city.kyoto.lg.jp/

■アクセス
西芳寺(苔寺)拝観申し込み方法とアクセス http://tabinoshiori.web.fc2.com/kokedera.html#1

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