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歴史コラム

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第71回 日本庭園の変遷を巡る⑬(江戸時代/桂離宮庭園)

京都の桂離宮は修学院離宮とともに江戸時代初期の公家の世界を代表するもので、それぞれの庭園は、これまで培ってきた庭園文化の集大成といえる。そこには当時の粋を尽くした美しさがあり、日本庭園界に与えた影響は絶大である。
各種の茶屋を園内に配置する手法は共通するが、本格的な書院群の有無が両者の大きな違いである。修学院離宮が二条城の対局にある公家文化を示したのに対して、桂離宮は公家風の書院群を示すことにより、公家による建築の優美を実現させた。
離宮の庭は、日本の伝統美ともいうべき雪月花の世界を演出していて、全体として平安時代の宮廷庭園の意匠にもどりつつ、さらに多様で豊かな景観を求めている。そこに展開される景観は、自然と人工との見事な融合である。見るからに自然風でありながら、見えないところで人の手が加えられている。

魅力あふれる桂離宮庭園


雁行する三棟の書院

桂離宮は西京区を流れる桂川に近い離宮で、同庭園は八条宮智仁(としひと)親王と智忠(としただ)親王の親子二代が精魂をかたむけて作り上げた、日本庭園史上の傑作である。桂の地は古くから観月の名所として知られ、貴族の別荘の地であり、平安時代には藤原道長の別荘が営まれていた。
同離宮は総面積が約6万9千平方米で、敷地の西部に古書院・中書院・新御殿の御殿群が雁行する。これら書院群は書院造が基調だが、随所に数寄屋風を採り入れ、桂川の水を引いた大きな池を中心とする回遊式庭園は、すべてを一望に見せることなく、視線を閉ざしながら新しい景観を展開させていく技法が至る所に駆使されている。松琴亭(しょうきんてい)、賞花亭(しょうかてい)、笑意軒(しょういけん)、月波楼(げっぱろう)等4棟の茶屋や持仏堂の園林堂(おんりんどう)、築山、州浜、橋、石燈籠などがさまざまな趣向をこらして適所に配されており、舟遊びのための船着き場がそれぞれの茶屋に設けられ、舟遊式の様式を兼ねていたことがうかがえる。
大小数個の中島を配した池東岸の松琴亭一帯には、天の橋立の景観を模式的に縮小して表現する「縮景(しゅっけい)」の手法が用いられ、松琴亭の前から望む天の橋立は園内随一の景観である。松琴亭の市松模様の襖(ふすま)は簡素なデザインだが、雅な雰囲気をたたえている。昭和期の作庭家重森三怜はこの模様からインスピレーションを得て、東福寺方丈に市松の庭を造ったという。


松琴亭前から見た天の橋立

松琴亭の市松模様の襖

意匠をこらした石の景観


古書院御輿寄前の「真の飛石」

桂離宮庭園には意匠をこらした石の景観が各所に配されている。なかでも御輿寄(おこしよせ)前の一面の青苔の中に敷かれた切石による延段(のべだん)は「真の飛石」とよばれる。延段は御輿寄に対して斜めに振り、さらに自然石の飛石と組み合わされており、直線と曲線とが厳しさと同時に軽快な動きをつくりだしている。
専門家の調査によると、桂離宮には1,780個の飛石があるという。日本庭園では石の表情を大切にする。色彩、形、大きさが表情のもととなり、置くべき場所に最もふさわしい石を選び抜く。周囲の景観との調和を配慮するのは当然だが、飛石はその上を人が踏み進むことから歩きやすさを第一とし、さらに美観を重視する。

神様が舞い降りる松


亀の尾の住吉の松

月波楼横の池泉に突き出た岬(亀の尾)に一本の松が植えられている。この松は『古今和歌集』仮名序に「高砂・住江(住吉のこと)の松も相生のやうにおぼえ」とある住吉の松で、対となる高砂の松は池をはさんで対岸に植えられている。常緑の松には、古来神様が天から舞い降りるという「依代(よりしろ)信仰」があり、その信仰が庭と結びつき、日本庭園では松が貴重な存在となっている。岬(亀の尾)はちょうど池泉全体を見晴らす位置にあり、敷地のほぼ中央にある。この位置こそ、神様に降りていただくには最もふさわしい場所なのであろう。

日本庭園の最高峰

日本庭園は水と石と植栽から構成されている。これら三つの要素は自然景観の構成要素であり、造園とは、限られた空間にもう一つの自然造景をなす行為である。桂離宮庭園には水・石・植栽の三要素が見事に盛り込まれている。さらに庭のポイントとなる景物がところどころに配されており、回遊する者の心をときめかせる。
同庭園は、回遊式という日本庭園のひとつの到達点というべき様式の中にあって、そのきわめてすぐれた構成とデザインはまさに日本庭園の最高峰と称される。1933年に来日したドイツ人建築家ブルーノ・タウトが桂離宮を訪れた際に、その簡素な美を「泣きたいほど美しい」と絶賛したことで同庭園は世界的にも有名になった。



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