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歴史コラム

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第72回 日本庭園の変遷を巡る⑭(江戸時代/修学院離宮庭園)

大自然の中の離宮

桂離宮とともに江戸時代初期の公家の世界を代表する修学院離宮は、桂離宮より約30年後の17世紀中頃に後水尾上皇の山荘として築造された。建築・庭園は上皇自身の設計により地形の雛形をつくり、一木一草(いちぼくいっそう)にいたるまでそれを基にして工事を進めたという。
比叡山の麓に位置し、周囲の山林や水田も含めた広大な区域を使って造営され、総面積が54万平米を超える雄大な離宮である。
音羽川(おとわがわ)による扇状地の傾斜を利用した上・中・下の御茶屋(離宮)から構成されており、「上の御茶屋」と「下の御茶屋」の標高差は40m程。大小の滝や小川があり、どこにいても絶えず水の音を聞くことができる。
大自然の中に埋もれるように構想された離宮は、上皇の理想を実現した世界として現在まで引き継がれている。各離宮は松並木の苑路でつながれ、その周辺の田畑の情景も庭園を構成する重要な要素となっており、景観保護のために特別に維持されている。現在は下から上へと拝観コースが設定されている。
修学院の名は、10世紀後半ここに修学院という寺が建立されたのが始まりで、南北朝時代以後この寺は廃絶したが、地名が修学院村として残ったことによる。
 


離宮を結ぶ松並木の苑路

石垣を覆う大刈込

鄙びた田舎の風景を再現

下離宮は、数寄風書院の寿月観(じゅげつかん)が中心となる池泉庭で、寿月観前の飛石が美しい。下離宮の東裏門を出ると広々とした水田が広がる。これらの農地は今でも宮内庁から委託された農家が耕作を続けている。上皇は離宮造営にあたり、山荘の規模は最小限にとどめて耕作する民の姿を離宮の中に取り組むことを理想とされた。その意思が今も継続されている。各離宮をつなぐ松並木は、明治時代に整備されるまでは畦道だったという。
中離宮は明治になって加えられたもので、元々は上皇の皇女朱宮(あけのみや)の御所の一部であった。客殿の大小5枚の欅(けやき)の棚板は、霞のたなびく様に似ていることから霞棚(かすみだな)と呼ばれ、桂離宮の桂棚(かつらだな)、三宝院の醍醐棚(だいごだな)とともに日本三名棚と呼ばれている。



隣雲亭前からみる京都市内

大パノラマが広がる上離宮


隣雲亭前から見る浴龍池

上離宮へ松並木を進むと大きな刈り込みに隠れた御成門に達する。竹垣を両袖にした下離宮と同形式の門で、右手に曲がる険しい坂道の両側は、大きく刈り込まれた植え込みが視界を遮っている。迷路のような小道の最上段は視界が大きく開け、眼下には大パノラマが広がり、見下ろしの景観を楽しむ茶屋という構想が体感できる。月を愛で、周囲の山々を見上げるために計画された下離宮と対をなすものである。
上離宮は浴龍池(よくりゅうち)と呼ぶ大きな池を中心にすえた回遊式庭園となっている。浴龍池は東西120m南北220mに及ぶ広大な池で、比叡山の斜面に200m程の堰堤(えんてい)を築いて山の水をせき止め、造られた。
堰堤は石垣で築かれ、そのままでも機能としては十分だが、周囲との調和が崩れるために石垣を覆うように刈り込みがなされている。先程、上離宮に向かう苑路から見た大きく刈り込まれた植え込みがまさにそれで、「用と美」の調和を図った植栽の造景といえる。
浴龍池は王朝風の舟遊びの場であり、唯一現存する創建当時の建物窮邃亭(きゅうすいてい)は山の尾根を利用した中島に建ち、池の南東の高みに建つ隣雲亭とともにそれらの建物から園内外の眺望を楽しむ構成となっている。
眼下に広々とした浴龍池が輝き、さらには京都市街や西山の連山が見渡せ、浴龍池を紅く染める夕陽は、まさに西方極楽浄土そのものだったのであろう。
浴龍池という名称には神仙思想の雰囲気が漂うが、窮邃亭から手前の中島:万松塢(ばんしょうう)に渡る中国風の千歳橋は19世紀の整備の際に付け加えられたもので、その造形と周囲の環境の適合については、現在でも評価が分かれるところである。



舟着場と土橋

中国風千歳橋


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