今までのミュージアム関連の鑑賞歴、接触人脈そして現在のミュージアム支援機会を生かして、様々な視点によるミュージアムの魅力等をご紹介しながら、アクティブシニアの皆様のゆとり生活設計支援ができれば幸いです。
木村 文男
ミュージアムぐるっとパス
関西実行委員会 事務局次長
兼 株式会社廣済堂 常勤顧問
E-mail : m-grupass-kimura@kosaido.co.jp
三ノ宮にほど近い阪神電鉄の「岩屋駅(県立美術館前)」を出て、空を見上げた。どこまでも真っ青な夏空に、白い雲が一つだけ浮かんでいる。その雲のすぐ下には深い緑の六甲の山並みが続き、目の前に大きく迫る。この春に王子動物園から県立美術館まで、目の前の南北の大通りが<ミュージアムロード>と命名され、解りやすい看板の表示が立っている。さりげなくミュージアムの存在を知らしめる活動が始まったことが読み取れる。そして、住民との交流の場を提供しようとする新館長の意気込みが徐々に伝わり始めている。
美術館北側正面外観 この兵庫県立美術館は阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとして、2002年に開館している。世界的にも著名な建築家・安藤忠雄氏による設計で、延床面積は約27,500㎡で西日本最大級。北に六甲山系、南に神戸港を望み、三フロアーに及ぶ展示室と二フロアーのミュージアムホール、アトリエ、ギャラリー、美術情報センターなどがあり、もちろんカフェ、レストランやミュージアムショップなども充実している。
毎年、夏の季節には学生や親子連れの来館者で賑わう。今(2011.8月)、「借りぐらしのアリエッティ(スタジオジブリ制作)×種田陽平展」を開催中で、精巧なセットを再現しアリエッティの世界を体感する機会を提供しながら、
駅前のミュージアムロード表示板併せて美術監督・種田陽平氏の仕事を通して映画美術を紹介している。つまり単純な平面だけの展示にとどまらず、三次元の世界の体験、映画と言う動画の世界までを取り入れて、創造性や芸術性の魅力を広く紹介している。ちなみに昨年(2010)この季節はゲゲゲの鬼太郎など妖怪漫画のヒット作でしられる水木しげる氏の「水木しげる・妖怪図鑑」展が開催され、多くの来館者で賑わった。数年前にはアニメーションの常識を塗り替えた「ピクサー展~『トイ・ストーリー』から最新作『カーズ』まで~」が開催されこれも評判になった。
この様な幅の広い展示展開こそまさしく、昨年の4月に米国から戻られたアートマネージメントの実践実力者である蓑館長の理解する部分である。館長自身もカナダや米国の美術館での責任者経験や大手オークション会社サザビーズ北米本社の副会長など延べ29年間に及ぶ海外での活躍、大阪市立美術館館長時代のフェルメール作品5点を揃えた「大フェルメール展」による60万人の来館実績、金沢21世紀美術館の初代館長としての大成功の評価がある。
会場入り口の、迫力ある大きな椅子これも長期にわたる海外美術館での経験や実績をベースに、美術館の在り方や価値などを日本国内中心の学術研究や芸術評論一辺倒ではなく、技術論や芸術論による切り口からだけでもなくて、広く「アートの社会化」を真正面から受け止め、自ら行動するマネージメント実践者として体を張ってこられた所以だと思う。もっと具体的な表現をするならば、館長自身が来館者目線を持ちつつ、美術館を身近に感じていただく触れ合いの場を提供し、素晴らしい芸術に接したり、子供達の感性を育んだり、国際交流の拠点になるような楽しい美術館作りの動きを着実に拡大させてきている。その気取りのない行動派館長に一人のファンとして、溢れるほどのエールを送り続けたい。