第二十一回　春風とともに、活気あふれる「ミュージアム」の新年度が始まる

岡崎の美術館へ続く白川の桜　 流れゆく水のように季節は巡る。今年ももう３月、年度末である。新聞には連日企業の新組織や新たな人事が掲載されている。記事の裏には行き交うビジネスマンの「繰り返される今」が見える。結果を知らされたそれぞれの心にだけ醸成されて行く感激や不満や失望感。それぞれがひと月かけてゆっくりと噛みしめたり、自分自身を説得したり、納得する材料を探したり。そして３月の末にはすべてを心の底に沈殿させ、凪ぎのような心理状態のなかで、それぞれの「やる気」が首をもたげる新年度。社会人にとって一年の中でいちばんの「それぞれの心の最高傑作」が作り上げられて行く季節である。
　先月から関西地区の2013年度の展覧会の全貌を把握しようとかなりの企画・特別展の情報を手に入れ整理を始めた。様々な視点や切り口で魅力的な沢山の展覧会が３月から続々と開催されてゆく。展覧会の名称等でそのミュージアムの意向や方向性、学芸員や館長の意識の程を垣間見ることがある。とにかくこの季節、それぞれのミュージアムの新年度スタートの意気込みの中で素晴らしい展覧会にめぐり会うことが出来る。そのためには新聞の広告欄に連日掲載される偏った同じ情報ではなく、様々なチラシや催事関連の客観的な情報を通して選択の機会を持つことが、思いがけない感動や新たな発見や予期せぬ出会いに遭遇することになる。まして４月ともなればまさしく観光シーズン到来で、桜や綺麗な花々に歓迎されながら心の高揚していく中で、心身ともに満たされた時をもつことが可能である。

京都国立博物館、館庭の桃の花 　３月に入り私の手元にも展覧会開催の案内状が個性あふれるチラシと共に届くようになった。すでに届けられたチラシを手にするだけでも、イメージが大きく拡がり開会の時が待たれる。４月の中旬には枝垂れ桜が満開で大人気の滋賀山中『MIHO MUSEUM』での特別展「古代ガラスー色彩の饗演ー」が大英博物館の展示物もそろえて始まった。疏水沿いに咲く桜を愛でながらの『京都国立近代美術館』の50周年記念展「交差する表現―工芸／デザイン／総合芸術―」。館庭に咲くかわいい桃の花に囲まれながらの『京都国立博物館』では「狩野山楽・山雪」展。阪神岩屋駅近くにある『BBプラザ美術館』の「パリに彩られた画家たち－マリー・ローランサンとその周辺」展や桜咲き乱れる西宮・夙川沿いの閑静な住宅街に佇む『西宮市大谷記念美術館』で始まる「とら・虎・トラ」展、『芦屋市立美術博物館』の「世界を魅了した『青』－浮世絵名品展」。そして４月２日から開催される『大阪市立美術館』の「ボストン美術館－日本美術の至宝」展、６日からは遥かに望む若草山からのそよ風も心地いい『奈良国立博物館』の当麻曼荼羅完成1250年記念「當麻寺－極楽浄土へのあこがれ－」展等が個性豊かに続々と開催されて行く。（手もとに届けられた展覧会情報のみを紹介しております。）

京都国立近代美術館の桜と大鳥居 　春の陽気に誘われて、街に出よう。いや、心おどる春の息吹を胸一杯に吸い込みながらそれぞれの博物館、美術館の企画展や特別展を観覧しよう。日本の文化や海外の多様な個性あふれる作品を通して、遥かな時に思いを馳せる豊かな時間をいっぱい手もとに引き寄せていただきたい。それぞれの４月である。新年度の始まりであり、出発である。胸を張りながら力強く前を向いて歩き始める時である。来年の今頃、納得の行く「自分なりの今」を迎えるためにも。

※「ミュージアムぐるっとパス・関西2013」が４月１日より発売されます（普及版　1,000円）。ミュージアムガイドブックの機能や無料入場券16枚・割引券68枚が添付された入場券機能。スタンプラリーで10館廻ればもれなく全員にプレゼント進呈。そして新企画の「展覧会ガイド・ツアー」に抽選でご招待（お土産付き）。また、参加施設の「主な年間展覧会スケジュール一覧」が初めて掲載されます。もちろん前号（第20回）紹介の堺市立文化館の「ミュシャ」の展覧会へは無料で入場出来ます。詳しくは「ミュージアムぐるっとパス・関西2013」のチラシやホームページでご確認ください。

＜届けられた特別展のチラシ＞