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歴史コラム

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第54回 平城京の氷蔵地、闘鶏国を歩く(奈良県天理市)

間もなく梅雨が明け、いよいよ本格的な夏が到来する。強烈な日射とうだるような暑さが続く日本の夏。この頃になると、「氷」と書いたのぼりをみるとちょっと涼しさを感じる。冷たいかき氷を食べて一休み.・・・夏ならではの楽しみだが、このかき氷、実は冷凍庫がある現代だけの食べものではない。
清少納言の『枕草子』「あてなるもの(上品で貴重なもの)」の段に、「削り氷(ひ)にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる」と記されている。意味は「削り氷に甘葛(あまづら)の汁をかけて、新しい金属の碗に入れてあるもの」。平安貴族が、涼やかなかき氷を楽しんでいた様子が伺える。

古代の氷貯蔵庫「氷室(ひむろ)」


氷室跡へ続く山道を望む

天理市福住町をはじめ奈良県東部山間地一帯では、冷蔵庫もなかった古代、冬の寒い時期に池で厚い氷を作り、それを切って山に掘った鉢状の穴に入れてススキなどをかぶせて保存し、夏に取り出して使用していた。その氷を保存した穴を氷室といい、多くの氷室が作られ、奈良の都・平城京に運ばれた。
日本書紀には、宮中では夏場に、酒に氷をひたして飲んだとある。削ってかき氷にして食べたりもしていたようだ。天皇などが亡くなったときに遺体を保存するのに使用したり、氷の出来具合でその年の吉凶なども占っていたともいう。
福住には古代の氷室跡が今も20以上も残っている。よく知られているのは、氷室神社の東南約400mにある室山氷室伝承穴である。丘陵尾根の稜線にそって土坑が並び、一つは上面直径8.4~10.6m、深さ2.67m、もうひとつは直径9.4~7.5m、深さ2.2mある。どちらもすり鉢状の形である。



復元された氷室

この辺りは標高が400mから500mの位置にあり、古代には闘鶏国(つげのくに)と呼ばれる小国家を形成していたといわれている。国中(くんなか)と呼ばれる奈良盆地に比して気温が5度ほど低く、奈良の都・平城京からは20km程の距離と当時としては比較的近距離で、気候的にも地理的にも氷室を作るのに最適の地であったと思われる。
7年前の平城遷都1300年祭では、この「氷室」から平城宮跡会場の大極殿まで23キロの道のりを約6時間かけ、わらで包んだ氷を荷車に乗せて歩いて運び、当時の朝廷への献氷を再現している。


古代氷室跡

古代氷室跡

日本書紀に記された氷室

『日本書紀』に次のような話が記されている。額田大中彦皇子(ぬかたのおおなかつひこのみこ)が闘鶏に猟をしたとき、野中に庵のようなものを見かけた。地元の豪族を呼んで問うと、氷室であると答えた。地面を1丈掘ってその上を草で覆い、穴には茅を敷いて氷を取り置いておく。夏まで氷は溶けず、水酒に漬けるという説明だった。皇子は氷を持ち帰り宮中に献上、天皇の歓ぶところとなり、これ以後、毎年、冬に蓄えた氷を春から用いるようになった。
『日本書紀』が編纂されたのは720年。この時代に大和国山辺郡都祁地方に氷室が存在したことは、1988年、平城京長屋王邸宅跡から出土した和銅5年(712年)の日付が入った「都祁(つげ)氷室」のことが書かれた木簡によって確かめられる。

氷の神様を祀る神社

奈良市の東大寺に近く奈良国立博物館の前に氷の神をまつる「氷室神社」があるが、奈良県には他にも古くからの「氷室神社」がある。奈良県天理市福住町にある「氷室神社」だ。
 立派な社号標と灯籠の立つ入口から、参道は真っ直ぐ杉の巨木が林立する鎮守の杜に向かい、社地の前を流れる布目川の支流に架かる神橋を渡ると神社に到着。鳥居を潜り参道を行くと手水舎で突き当たり、右に曲がると灯籠と注連柱が建立されていて、中程にスロープが造られた石段を上がると境内だ。
 広々とした境内の中央奥にはとても横に広い唐破風付きの厳かな拝殿が建立され、奥の玉垣内に檜皮葺の本殿が建立されている。710年に創建された奈良市にある氷室神社と祭神は同じであるが、福住氷室神社の創建は約1600年前の5世紀はじめのころで、日本最古の氷室神社といわれる。
 かつて、朝廷への献上が旧暦の6月1日に行われていたとの言い伝えから、現在は新暦の7月1日に献氷祭が行われる。神饌には瓜や餅、小豆の他に天然氷が供えられる。


福住氷室神社入口

福住氷室神社参道

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