城陽は、「南山城地方」と呼ばれる京都以南の地のほぼ中央部に位置する。市域西側を木津川が北流し、東部から南東部にかけては丘陵地、山地が広がる。
市内には、縄文時代の遺跡をはじめ、古墳や神社・寺院跡など貴重な遺跡や文化財が数多く点在しており、郡役所跡である正道官衙(しょうどうかんが)遺跡などから、早くから南山城地方の要衝の地として栄えたことが伺える。
平安時代には、木津川水運の中継地として官制の旅館にあたる宿駅が奈島に置かれ、都に近い荘園地帯としても発展した。室町時代になると山城国一揆を経て住民自らが国を治める自治の歴史を築き、木津川水運に加えて発達をとげた陸上交通における街道の中継地として賑わった。江戸時代に入ると村の自治が一層進み、稲作だけでなく多種類の農作物を栽培する豊かな農村地帯として発展した。
市を南北に貫く国道24号のすぐ東側を平行して走る現在の市道1号線は、昔は「奈良街道」と呼ばれ、京都と奈良を行き来する人々でいつも活気に溢れていた。特に、長池のあたりは、京都へ五里、奈良へ五里と中間に位置し、「五里五里の里」として宿屋が建ち並び、たいへん賑わったという。
城陽市役所を挟んで東側をJR奈良線、西側を近鉄京都線が市内をほぼ南北に縦断して並走する。JR奈良線の東には古来、大和から木津、宇治、山科を通り、近江まで続く山背(やましろ)古道があった。その中で今、城陽市、井出町、木津川市(旧山城町、旧木津町)までの南山城の山際を緩やかにうねりながら続く全長約25キロメートルの道のりは、豊かな自然と文化・歴史を巡る散歩道となっている。
”やましろ”は古道の名前としては「山背」が一般に用いられているが、「山城」もしくは「山代」とも書かれる。「古事記」には山に包まれた山里の気配が感じられる「山代」が、「日本書紀」には山並を背にして村落が連なる雰囲気の「山背」が使われており、「山城」は平安時代に国名として用いられるようになったという。
JR城陽駅から東へ徒歩10分程の古道沿いにある水度(みと)神社は、旧寺田村の守り神で「山城国風土記」にも記載されている古社。創祀の年代は平安時代初期と伝われ、現在の地へは鎌倉時代に遷された。重要文化財でもある本殿は1448年に造営された市内最古の建物で、屋根は檜皮葺で正面一間社流造に大きな千鳥破風が設けられている。
木津川流域堤防は桜づつみとして整備され、堤防沿いの荒州地区には広々としたイモ畑が続く。城陽のイモは250年も前の江戸時代から栽培が始まり、明治時代後期から「寺田イモ」としてその名を知られている。
木津川の上流は花崗岩が多く風化しやすい地層のため、川に絶えず砂が流れ込み、それが堆積してかつてはたびたび氾濫をしたが、イモの栽培に適した砂地で良質の土壌は、その洪水によって運ばれた肥えた泥(ニコ)でつくられたという。
この砂地の土壌は茶葉の栽培にも適していて、木津川河川敷の八幡市『上津屋(こうづや)』と城陽市『上津屋』に浜茶として広がった。両地は木津川の右岸と左岸にあるにも関わらず、1889年までは上津屋村として一つの共同体であり、その中で浜茶に取り組んできており、現在も長大な木製の流れ橋(上津屋橋)により密接なつながりを保っている。
これら河川敷の茶畑は、「宇治茶」の生産に係わる景観「日本茶800年の歴史散歩」 構成文化財のひとつとして、2015年4月、「日本遺産」に認定されている。
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