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歴史コラム

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第66回 日本庭園の変遷を巡る⑧(室町時代/大徳寺大仙院庭園)

枯山水の発展

室町時代の庭園史上特筆すべきことは「枯山水」の発展である。「枯山水」という名称はすでに平安時代の『作庭記』にも登場しているが、それは池を中心に展開される寝殿造り庭園の部分的な手法であり、あくまでも水のないところに立てられた石あるいは石組という意味である。それに対して室町時代以降の「枯山水」は意図的に水を用いず、石と砂により自然景観などを象徴的に表現する「庭園様式」としての枯山水である。
枯山水は風景を石という素材に置き換えて表現したが、そのことによって思想的な表現を生み出した。庭園は自然をミニチュア化した作為的な自然であるが、枯山水は寝殿造りの庭園のような池や中島、さらには釣殿のような具象的な縮小モデルではなく、単色で描かれた水墨画の景色を立体化したものともいえる。
枯山水が発展した背景には、室町時代の応仁の乱による社会の疲弊や経済の衰退があげられる。また、京都における水の獲得が困難になったことも大きな要因といわれている。
しかし、それらのマイナス要因だけではなく、鎌倉時代から室町時代にかけて盛んになった中国との交流によって、中国の北宋山水画や庭園が日本の景観表現に大きな影響を与えたということができる。

禅宗寺院と枯山水

枯山水は主に禅宗寺院で発展した。原則的に禅宗寺院の方丈は、その前面に白砂の空間を設けた。そこは儀式の場であったが、時代が下がるにつれ、儀式が室内で行われるようになり、それとともに白砂の場の意味が失われ、そこに庭園が築かれるようになった。
その場合、方丈庭園は単なる自然風景の縮景ではなく、禅本来の修行の場である深山幽谷を象徴するものであった。また、深山幽谷の造景には、中国の宋時代に発展した水墨山水画が手本となった。従って禅宗寺院の枯山水は、山水画の世界を三次元に表現したということもできる。
しかし限られた空間で、広大な景観をそのまま造ることはできない。そこで縮景が行われ、さらに進むと石ひとつで高山を表すなどの抽象化が進んだ。
枯山水は、実際の水を使わないからといって海や川など水にかかる表現を抑えるわけではない。むしろ水を使わない分、見立てという日本庭園が最も得意する一種の抽象表現が盛んに行われ、白砂は、時には大海や大河となり、さらには雲海ともなる。

大徳寺大仙院庭園

庫裏(くり)と方丈をつなぐ板の間を抜けると方丈正面にある広縁(ひろえん)に出る。檜皮葺(ひわだぶき)の玄関をくぐるとすぐに腰掛けがあり、花頭窓から前庭に敷き詰められた白砂の中の二つの盛砂が切り取られて見える。この方丈は室町時代後期の建築で、庭園とともに大徳寺の中ではもっとも古い。
方丈の内部に入る前に、広縁を通り抜けて縁を伝って方丈の裏側に出ると、そこに枯山水の庭があり、その先に細長い庭が続いている。
わずかな空間に、中国(北宋)の山水画そのものを造景化したような一大パノラマが展開する。1513年、大徳寺第76世古岳宗恒(こがくそうこう)が大仙院方丈を建立し、そのあと宗恒自身によって本庭も築造された。
方丈の北東に屏風のように立つ二つの巨石の右奥に三段の滝がある。山水画の遠近法を巧みに取り入れており、この二つの巨石により滝の景観が山の奥深くにあるように見える。巨石の下のやや四角い石を、滝を上る鯉魚石(りぎょせき)と見なし、この滝を夢窓国師が好んだ龍門瀑とする説もある。滝から流れた水は橋の手前で左右に分かれ、大河となり海に注ぐ。砂紋が水流を表している。方丈の周囲にはこの庭以外に後世に造られた枯山水があり、それら全体で深山幽谷の滝から大海原までの景観を表現していると見ることもできる。大徳寺の庭園は、北宋山水画の三次元ともいえるし、自然風景の縮景と見ることもできる。



大海をあらわす方丈南庭(大仙院)

大仙院書院庭園蓬莱山
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