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歴史コラム

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第68回 日本庭園の変遷を巡る⑩(安土桃山時代/茶庭:露地)

護岸石組や豪快な鶴亀石組を創造した安土桃山時代は、一方で詫び・寂び・幽玄の庭である茶庭(露地)を生みだした。茶の湯の成立は室町時代末期と考えられており、この頃に村田珠光が四畳半の茶室を初めて建てたとされている。安土桃山時代を迎え、武野紹鴎や彼の弟子で侘茶を大成した千利休の登場によって、独立した草庵の茶室と小庭が造られるようになった。

露地から生まれた日本庭園に欠かせない景物

千利休が実際に関与したことがほぼ確実とされるのが、京都府大山崎町の妙喜庵(みょうきあん)にある待庵(たいあん)で、現存の茶室としては最古のもので、建築年代は1582年頃と考えられている。
本来的な茶室空間は二畳敷きの方形で、床の間があり、次の間一畳が付設されているとはいえ、村田珠光以来の四畳半に比べてもその狭さは際立つ。建物は土壁で囲われ、壁に開口部を作り明障子(あかりしょうじ)で採光するという民家の手法が取り入れられている。入口は小さな躙口(にじりぐち)で、床の間も土壁で塗り込めた洞床(ほらどこ)である。待庵は妙喜庵の書院とは別棟となっており、書院から待庵に至る通路が庭園空間としての露地となる。


妙喜庵待庵

妙喜待庵茶室

露地は当初、人が茶室まで歩む「道すがら」という意味で路地、路次などと書かれた。またそれは茶座敷に向かう細い通路であったことから、坪の内ともよばれた。やがて茶座敷専用の入口と通路が生まれ、独立した露地へと発展した。
露地と表記したのは千利休である。露地は仏教語でもあり、煩悩を離脱した境界を意味する。露地を歩みながら世の中の汚れをすすぎ、清浄無垢の茶室へと向かう。それが利休の茶の湯の世界であった。
露地は、その後の日本庭園には欠かせない景物となった石敷きの苑路、飛石、蹲踞(つくばい)、石燈籠などを造り出した。まず、茶室に向かう露地を歩くために飛石が考案された。苔むした露地をそのまま歩くと、苔が傷むと同時に湿気が足を濡らし、履物が汚れ、茶席に不浄を持ち込むことになる。それを防ぐために小さな石を点々と打ったのが飛石の始まりである。
敷石も露地で発展した。飛石よりも歩みを安定させる働きがあり、幅を広くすれば、雨の日など一人が傘をさし、二人並んで歩くことができる。
露地が発達するとともに、手水鉢が茶室の前に置かれるようになり、やがて、その手水鉢の前横に、それぞれの役目をもつ石が組まれるようになった。前石にしゃがみこんで手水を使うことから、手水鉢とその回りの役石全てを含めて蹲踞とよぶようになった。蹲踞は、茶室に入る前に身を清めるという意味があり、露地では最も重要な役割を果たしている。蹲踞周辺の景観は露地造りにおいてもとりわけ神経が注がれる。
また、夜の茶会のために明かりの必要性が生まれ、石燈篭が導入された。利休は石燈篭の明け方の残り火に風情を感じ、その景を露地に取り入れ、露地の明かりにしたという。石燈篭は本来寺院や神社の社殿の前に、献燈や明り取りとして一対で置かれるものだが、露地に取り入れられることにより、飛石や手水鉢とともに日本庭園には欠かせない景物となった。


露地

蹲踞

露地が理想とする美意識

露地は「山居の体」(さんきょのてい;山の中の庵)で「市中の隠」(しちゅうのいん;都市の中の独立した自然空間)、すなわち市中にありながら山里の趣を求めるというきわめて都市的な美意識を理想とした。そのため、露地に表現された景観は、深山幽谷を旨とした。
露地にはあまり草花を植えない。それは露地が深い山道に見立てられていることと、茶室に向かう人々の心を乱さないためである。招かれた客は、茶室における主人との出会いを楽しみにする。一期一会といわれるように、その出会いは貴重な一時である。従って、精神を乱すような色彩や強い香りは、できるだけ控えることになる。
落葉樹も露地には適さない。それは花木と同様、四季の移ろいや、人生の悲哀などを強く意識させてしまうからだ。さらに決定的な理由がある。茶事の時、茶室の床の間には花を生ける。もし露地に多くの花木があれば、茶室に入ったとき、床の間の花を見た感動がかなり薄れてしまう。



京町家の坪庭

ウナギの寝床とよばれる京の町家は、間口が狭く奥行きが長い。その中間に明り取りの空間が設けられ、そこに露地のミニチュア版のように手水鉢や燈篭が飾られた。そうして生まれたのが、小さな庭空間としての坪庭である。その様式は現代の住宅や和風旅館にも受け継がれ、日本庭園の一ジャンルとなっている。
利休による侘茶の大成は、その後の日本の庭園の歴史にとってもまた、きわめて大きな意味を持ったのである。


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