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歴史コラム

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第74回 日本庭園の変遷を巡る⑯(明治・大正時代/植治の庭)

植治による新しい庭園文化


並河邸庭園

七代目小川治兵衛(1860~1933;屋号「植治」)は、近代日本庭園の先駆者とされる作庭家で、本名は源之助といい、乙訓郡神足村(長岡京市)生まれ、明治10年にその才能を見込まれ江戸中期から続く植木屋治兵衛である小川家の養子となり、明治12年(1879)に七代目小川治兵衛を襲名する。
その6年後の明治18年、近代産業の育成を目指した京都は水力を利用するために琵琶湖から水を引く工事に着工し、明治23年に琵琶湖疎水が完成した。琵琶湖疎水は明治日本が京都で最初に成し遂げた記念碑的な事業で、お雇い外国人技師の力を借りずに日本人が独力で成し遂げた象徴的な事例である。
植治は明治27年、七宝(しっぽう)業を営む並河靖之邸の庭園を手がけ、七宝焼き工房の研磨用に引き込んだ疎水の水を園地に利用した。植治が疎水の水を庭園に利用した初めての例であるが、同年に手がけた無鄰菴の庭園が自然で開放的な空間の庭園として高い評価を受けたことは前回記載のとおりである。
彼はこれを契機に自然の景観と躍動的な水の流れを作り出すという新しい日本庭園を数多く手がける。琵琶湖疎水の水を引き入れた庭園群をつくることによって、近代京都に新しい庭園文化をもたらしたのである。特に南禅寺周辺には東山を借景とした明るい芝生に琵琶湖疎水を引き込み、浅い流れを配した池泉回遊式庭園を持つ別荘がたくさん作られた。 植治の庭園は水を静止した池ではなく、流れとして用い、石は伏せ、ツツジやサツキを低く刈り込み、広く開けた芝庭を配するところに特徴があるといわれ、その風情は屋内から眺めるだけでなく、園遊会に相応しい近代の庭園だともいわれる。
庭園内の樹木に関しては名木を排し、モミやヤマモモなどそれまであまり用いられなかった樹種を使い、庭園の境界部分を隠すなど、広大ではあっても都市型の庭園にふさわしい手法を用いた。

植治作庭による多くの名園

植治の作庭した庭園は南禅寺周辺だけではなく、京都や大阪、滋賀、静岡、東京など各地にわたっており、これらの庭園の多くは国や各都市の名勝に指定されている。 国の名勝として指定されているものに、京都市内では無鄰菴をはじめとして平安神宮神苑や清風荘庭園、對龍山荘庭園があり、市外では滋賀県長浜市の慶雲館庭園、東京都北区の旧古河庭園がある。京都市内にある前述の並河靖之七宝記念館庭園や清水家十牛庵庭園、恰園、白河院庭園、高山寺遺香庵庭園、ウエスティン都ホテル葵殿庭園等はいずれも同市の名勝として指定されており、大阪市の指定名勝としては大阪市天王寺区の慶沢園(旧住友家本邸庭園)がある。



西神苑白虎池

中神苑蒼龍池

また、平安遷都千百年を記念して創建された平安神宮の神苑(京都市左京区)の作庭にも腕を振るい、琵琶湖疎水の水を引いて西神苑の白虎地(びゃっこち)や中神苑の蒼龍池(そうりゅうち)を造る。伏見城の跡地である桃山官林(ももやまかんりん;京都市伏見区)に放置されていた庭石は豊臣・徳川の時代の庭園に用いられていたものであるが、それらの払い下げを受けて景石(けいせき)として用いた。
中神苑のモダンなデザインの臥龍橋(がりゅうきょう)は、明治の終わりから大正の初めにかけて作られたもので、豊臣秀吉築造の五条大橋を京都市から、三条大橋の花崗岩製橋脚・橋台を京都府からそれぞれ払い下げを受けて造ったものである。
大正三年の円山公園(京都市東山区)の改良工事で植治が施工した滝や流れや池の部分も、都市公園に導入された日本庭園の優れたデザインとして、歴史的な意義を持つものと評価されている。



慶沢園

円山公園庭

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