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歴史コラム

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第75回 日本庭園の変遷を巡る⑰(昭和時代/東福寺方丈庭園)

伝統的手法とモダンな造形

昭和の戦前から戦後にかけて日本の庭園界に大きな足跡を残したのは、重森三怜(1896~1975)である。岡山に生まれた重森は、画家を志して上京するが、関東大震災で帰郷を余儀なくされる。1929年、京都に移住してからは茶や生花などの伝統芸能の実践・研究に取り組みながら、庭園研究に力を注いだ。私財を投じて全国の350近くの庭園を自力で実測、その成果を『日本庭園史図鑑』として刊行するなど日本庭園の体系化にも尽力した。
作庭においては、生涯を通じ二百余りの庭を手がけ、伝統的な手法とモダンな造形とを大胆に組み合わせた。その作風は石組を主とした抽象芸術的表現を得意とし、自然風の表現を基調としてきた従来の日本庭園とは趣の異なる特徴をもつ。重森は自作を語る時、伝統を踏まえつつ創造性を発揮する、という意味を込めて「永遠のモダン」という表現を好んだ。京都の東福寺方丈庭園、松尾大社磐座などがその代表作である。

純粋な芸術としての庭園

研究が一段落したとき、彼は東福寺の景観整備にかかわり、それを機に彼の実質の処女作である方丈庭園の作庭を行った。東福寺は臨済宗東福寺派の大本山で、その方丈は明治14年の火災により焼失したが、明治23年(1890)に再建された。方丈とは禅宗寺院における僧侶の居室である。
全国各地の古庭園を直接調査するなかで確立された重森の日本庭園に対する理解は、「石組の象徴性こそが日本庭園の芸術的本質で、庭は大地に描かれた立体的な絵画であり、彫刻である」というものであった。そのため、東福寺方丈の作庭にあたって「純粋な芸術としての庭園」を目指し、方丈の南・北・東・西にそれぞれ独立したモチーフで庭園を造った。
禅宗の方丈には、古くから多くの名園が残されてきたが、方丈の四周に庭園を巡らせたものは東福寺の方丈のみである。



南庭:四仙島と五山、八海

西庭:井田市松

東福寺方丈 八相の庭

南庭は広さ210坪の枯山水庭園で、正面左手に四つの石組群があり、左から方丈・蓬莱・瀛洲(えいしゅう)、壷梁(こりょう)の神仙島を表現している。石の表情や組み方に斬新さがある。右手の五つの築山は京都五山を象徴し、渦巻く砂紋は「八海」を表している。
西庭はさつきの刈り込みと砂地とを葛石(かずらいし)で方形に区切り、大きく市松模様に図案化されている。井の字に等分した古代中国の田制「井田(せいでん)」にちなみ、「井田市松(せいでんいちまつ)」と呼ばれる。
北庭は正方形の敷石と苔による市松模様で、桂離宮松琴亭の市松模様の襖からヒントを得た。絵画を思わせる斬新なデザインで奥に行くに従って敷石がまばらになり、それが庭に広がりを感じさせる。廃材の敷石を利用し、苔の生育度により印象が微妙に異なる。
東庭は北斗の庭と呼ばれ、雲文様地割に円柱の石で北斗七星を構成している。北斗七星に見立てた石は、もと東司(重要文化財、旧便所)の柱石の余石を利用したもの。後方には天の川を表した生垣が配され、夜空が足元に広がるかのような小宇宙を造り出している。
この方丈庭園は、四つの神仙島と五山の築山、ならびに「八海」、「井田市松」「北斗七星」の八つを併せて釈迦の八相成道(はっそうじょうどう;釈迦の生涯の八つの重要な出来事)」を表現していることから、「八相の庭」と総称されている。北斗七星は釈迦が住む天を意味するとも考えられる。

重森の庭園に対する評価は、肯定派と否定派にはっきりと分かれる。前者は庭を芸術性において評価する人々であり、後者は庭を芸術性よりもアメニティ性において評価する人々だと言われている。



北庭:市松文様の敷石

東庭:北斗七星と天の川

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