今までのミュージアム関連の鑑賞歴、接触人脈そして現在のミュージアム支援機会を生かして、様々な視点によるミュージアムの魅力等をご紹介しながら、アクティブシニアの皆様のゆとり生活設計支援ができれば幸いです。
木村 文男
ミュージアムぐるっとパス
関西実行委員会 事務局次長
兼 株式会社廣済堂 常勤顧問
E-mail : m-grupass-kimura@kosaido.co.jp
今年の京都は「春とともに賑わうだろう」と聞いたのは1月の中旬だった。それも旅館予約が満杯の話や市内を走るバスの沢山の車体広告からも街は観光客であふれる予測が十分に理解できた。今年、法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌にあたる。当然、京都にある総本山知恩院や西本願寺、東本願寺が脚光を浴びることになる。
背後に東山の峰々を控えて、京都駅からほど近い東山七条に
京都国立博物館 特別展示館(重要文化財)開館から114年に及ぶ「京都国立博物館」がある。その「京都国立博物館」で3月下旬から特別展『法然-生涯と美術』が開催されている。人々の救済のための念仏信仰「南無阿弥陀仏」を唱え、人々の平等を説いた法然にまつわる、国宝『法然上人絵伝四八巻』や寺社に伝わる名宝やゆかりの品々を紹介する、歴史の中で宗教を身近に感じる興味深い回顧展である。(~2011.5.8)
かつて「伊藤若冲展」「曾我蕭白展」など江戸時代の魅力ある個性派作家に光を当て、毎回ブームを起こしてきたその博物館である。大通りに面した煉瓦造りの壁に沿って歩くと瀟洒な入口がある。一歩足を踏み入れれば荘厳で風格のある建物(本館)が目に入る。その展示室に漂う凜とした空気に何度心震わせたことか。展覧会の度にそれぞれの展示品の魅力を存分に感じさせてくれる、あの雰囲気と瞬時にして引き戻されるその時代への感覚と時を裏付ける説得力のある展示品の数々。いとも簡単に200年や500年、そして1000年までもが昨日の出来事のように感じられる凄まじいほどのタイムスリップに思わず感動をもらう。
その博物館の敷地のなかで繰り広げられる折々の季節感も素晴らしい。春満開の桜の下、広い庭の片隅でピンクに染まるベンチが好きだ。真夏の陽光にキラキラ輝く、大きな噴水にうつるロダンの『考える人』がいい。晩秋の釣る瓶落としの夕日のなか、赤く照り映える古煉瓦の眺めも見事だ。真冬の粉雪舞い散る本館への心高ぶる歩みも好きだ。長い展示の歴史のなか、多くの人々に感動や元気や文化の匂いを無言のうちに脈々と語り続けてきた「京都国立博物館」こそ、文化発信のふるさとである。すぐ横には長谷川等伯で有名な「智積院」や「養源院」があり、「東山界隈なるほど!納得絵画めぐり」にも事欠かない。
ハイアット リージェンシー
京都・正面玄関 あの3月11日の大震災以降の厳しい状況にあって、時間とともに一方で求められるものは心安らぐ大自然の風景や心を癒す感動の芸術や美術かもしれない。この春、多くの観光客であふれるはずだった京都は、いま被災地にむけて静かな祈りの中にある。
どっしりとした佇まいの博物館を出た高台の歩道からは、暮れなずむ夕日の中に京都の町並みが一望できる。目の前にあるホテル、ハイアット リージェンシー 京都のゆったりとしたソファーに腰を下ろし、時のうつろいの中で今日を生かされている幸を感じながら、家族や友人そして厳しい状況下で一生懸命に戦っている多くの友の姿を想った。