今までのミュージアム関連の鑑賞歴、接触人脈そして現在のミュージアム支援機会を生かして、様々な視点によるミュージアムの魅力等をご紹介しながら、アクティブシニアの皆様のゆとり生活設計支援ができれば幸いです。
木村 文男
ミュージアムぐるっとパス
関西実行委員会 事務局次長
兼 株式会社廣済堂 常勤顧問
E-mail : m-grupass-kimura@kosaido.co.jp
美術館正面玄関 今年、この京都市美術館の美術鑑賞もこれで3度目になる。ここ岡崎の美術館付近にも四季折々の顔がある。桜の季節の華やぎ、新緑の頃の爽やかな風、人がすうっと引く夏のけだるさ、行き交う人々の秋を求める活気、初冬に漂う良質の観光地独特の寂しさ。京都市美術館の美術展の魅力と同時にこの岡崎辺りの雰囲気がいつも、心豊かな独りにさせてくれる。納得のゆく「コレクション展」のあと園庭南側に置かれた並ぶベンチに腰掛け、近くで仕入れたお握りをゆっくりと口にする。(※家内に「そんなみじめったらしい昼食やめたら」と言われる)眺めれば遥か東山の峰々、目の前にはとめどなき穏やかな疏水の流れ、振り向けば朱に燃え立つ平安神宮の大鳥居。生きる満足に思いを巡らせ、あすを想うぼんやりとした安らぎの時間がどこからともなくやって来る。
玄関脇にある掲示版 今、京都市美術館では「コレクション展」を開催中(~2012.1.15)。毎年、数回開催の「コレクション展(常設展)」だが、展示作品の質の高さには毎回感心させられる(大人500円)。そもそもこの展覧会は、美術館所蔵の明治以降〜1990年代に至る日本画・洋画等を、毎回切り口を替えタイトルに合わせた作品が展示されている。土曜日(平日なら尚更いい)などゆったりとした雰囲気のなかで、素晴らしい作品をそれぞれ心ゆくまで眺められる楽しみと画面上での思わぬ再発見、伝わりくる作家の思いや心意気や時代背景など、かけがえのない時間が静かにゆっくりと過ぎて行く。この種(常設展)の展示会を皆様にはお薦めしたいが、やはり一人で何回でも独占できる、空気との戯れや作家との無言の会話こそが最良だと思う。それにしても魅力なのは毎回展示される「コレクション展」の広報・宣伝用のポスターやチラシである。タイトルに相応しい作品の拡大レイアウトと解りやすいキャッチコピーにより会場へと誘われる季節感や期待感の不思議。私の心はポスターやチラシを目にした時から、その会場に紛れ込んでゆく錯覚に陥り「なるほど」の連発が始まる。
この京都市美術館の展示の多様さにはいつも目を凝らす。毎年数回におよぶ「コレクション展」とは別に「京展」、「院展」、「日展」や「所蔵品展」、「特別展」等を開催しながら併せて集客の核をなす大規模の作品を海外から引き込む作業を続けている。一昨年の「ルーブル美術館展」、昨年の「ボストン美術館展」に続き今年は「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」や「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」等で多くの美術フアンを魅了してきた。おそらくこの様な京都市美術館関係者のたゆまぬ努力こそ、その存在感を示しながら長期におよぶ日本の文化・芸術の中心地としての文化創造への大きな役割を連綿と果たし続けているのだと思う。
いよいよ今年も余すところあとわずか、厳しく大変な一年だったように思います。迫る新年が皆様にとりまして「素晴らしい年」になりますよう、心から祈念申し上げながら今年最終の「ミュージアムなるほど!巡り」を終了させていただきます。