マルチとは、もともと畑にワラや刈った草を敷くことをマルチング(敷き草)と呼ばれたことからついた名前です。現在では、ポリエチレンなどのフィルムで土壌表面を覆い、所定の間隔で穴をあけてタネをまいたり、苗を植付ける形で利用するものです。マルチ栽培は、地温上昇効果や地温上昇抑制効果、雑草抑制効果、害虫の飛来防止を目的としており、使用目的によりフィルムを選択できます。
その他にもマルチは作物の根の保護や土壌水分の保持、肥料流亡防止などに有効で、作物の安定生産を目的として利用されています。最近では、栽培終了後に使用したマルチをそのまま、すき込むことができる生分解性マルチの利用も増えつつあります。
(1)耕起や整地作業では砕土を特に丁寧に行い、うね面を平らにして土壌表面とフィルムがよく密着するようにします。
(2)風にとばされやすいところでは、床幅を狭くしてフィルムを土の中に深めに入れて、風に飛ばされないようにします。
(3)土壌水分の少ない時にマルチを張ると、発芽や定植後の活着が遅れたり、その後の生育が不揃いになる場合もあるので、土壌が乾いている場合は降雨後か十分かん水した後にマルチを張るようにします。
透明マルチ | 着色マルチ(グリーンフィルムなど) | 黒マルチ |
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低温期に地温を高めて作物の生育促進と増収を目的に使用します。しかし、生育の中後期になると地温が高くなりすぎて、葉菜類などでは高温による生育への影響が発生することもあるので注意が必要です。 | 地温上昇と雑草抑制の両方の効果を目的として使用します。地温上昇効果は透明フィルムと黒フィルムの中間とされています。雑草の発生が少ない時期には十分な雑草抑制効果があります。 | 一般的によく利用されるマルチ。光線を透過させないので、マルチ下の雑草をほとんど防除できます。ただし、地温上昇効果は透明マルチフィルムよりも劣ります。 |
白黒ダブルマルチ | 反射マルチ(ムシコンマルチなど) | 生分解性マルチ |
表面が白色、裏面が黒色のフィルムで地表面への光線を遮断することで地温の上昇と雑草の発生を抑制する効果があります。高冷地でのレタス栽培などによく利用されます。 | 光を反射する性質を利用してアブラムシを忌避する目的で使用します。全面銀色のフィルムは地温上昇抑制効果があります。 | 天然高分子であるデンプン、セルロースや石油から合成した素材を元に作られたマルチフィルムで微生物の働きによって水と二酸化炭素等に分解されます。栽培終了後に土中にすき込むことにより撤去作業が省略できます。一般に他のマルチと比べ価格が高くなります。 |