第十回　春の天ぷら

野菜の端境期春の楽しみ

春は冬野菜と夏野菜の狭間。野菜の端境期です。空を見上げれば桜の花、目を地上に落とせば菜花の鮮やかな季節。しかし市場は些か寂しいこの季節。ですが、案外おもしろいのが山菜や野草など自然の山や庭や道に生えている食べられる野菜や草。山に行かなきゃ生えて無いものもありますが、東京や大阪の大都会でもアスファルトの脇に案外食べられる野草が生えているものです。さすがにせりや枸杞（くこ）が生えているのに出くわしませんが、たんぽぽ、なずな、アザミなどは幹線沿いでも生えていたりするものです。 冬に溜め込んだものを春に出して行くと身体がとっても楽になります。自然の山菜や野草は勝手に生える力を持つだけのことはあります。押し出す力も存分です。野菜の端境期を楽しむ、これもまたなかなか風情のあるものです。 　

たんぽぽも食べてみるべし

山独活、蕗の薹、たらの芽、うるい、ぜんまい、ふきなどなど今まさに山菜シーズン。この季節しか食べられないものばかりですのでぜひ楽しんでお試しを。山菜は全国各地で地元山菜が採れますが、特に西は丹波、東は山形、秋田が質量共に豊富。僕は中でも山形の山菜ファンで、その種類1000を下らず。以前、山形へ伺った際に出会った山菜伝道師芳賀さんは、自費で山菜図鑑を出版されその多くの山形山菜を網羅し、自費出版にも関わらず1000部刷った自著が即完売されたそうです。地元はもとより全国の山菜ファンが買い求めあっという間の出来事だったとのこと。ちなみに写真は芳賀さんに東京へお越し頂いて食のぐるり主催で開催した山菜とワインの会の模様です。お着物姿がよく似合われます。

春はてんぷら

春の山菜や野草のお料理で何か好き？と聞かれると「てんぷら！」と即答です。名残りの根菜や走りの新玉などと、野菜存分の春のてんぷらや野草の苦みやエグミを楽しむのに絶好です。先日、大好きな「てんぷら近藤」の近藤さんがお話されていた美味しいてんぷらの揚げ方を、名言とともにお伝えして今日のコラムの締めとします。