第二十一回　酒飲む、ハレの日

酒の起源は共同飲酒

夏から秋にかけて欠かせないのが「祭」です。東京ですと伝統的な三社祭にはじまり、今では最大の祭となった麻布十番祭や若者に大人気の自由が丘女神祭など新旧入り乱れて百花繚乱の気配です。祭はそもそもの起こりが神様への祭礼。その言葉の通り、「まつり」は「祀り」であり、神すなわち先祖を祀るところにあります。その祭＝祀りに欠かせないのが直会（なおらい）です。直会は神事終了後の打ち上げであり、神事の行事のひとつ。神様が召し上がったものを神様と一緒に頂く儀式です。その直会でこれまた欠かせないのが「酒」、「お神酒」とも言われ、神に捧げた酒を大きな杯で祭の参加者が順番に飲んで行きます。大切なのは「共同飲酒」にあるというところです。

飲酒は社会的なハレ行事

祭の席で神と繋がり、集まった人々と集団でつながる。そこに「酒」がある。同じ器で神と集団と酒を酌み交わすことで宗教的連帯感が高まって行きました。まさに社会的ハレの日。昨今、酒は疲れた心身を独りで癒す道具の様な側面が主流となった感がありますが、その原点は直会であり、本来は人々が集まって行う社会的行事、すなわちハレの日のツールであるべきなのではないでしょうか。祭、結婚式、趣味の集い、ケの日の自分たちを解放し、また明日からのケの日にエネルギーを与えてくれるハレの日。人と繋がり、酒を飲む。神が与えてくれた直会に感謝です。

神の酒の食文化

祭や神の酒にみられるハレの文化はとても日本的です。外来の酒にはあまり見つかりません。乾杯等儀礼的な飲み物としての酒、酩酊の道具としての酒が外来酒の本質です。神事としての佇まいと文明より文化の軸が強い酒は、そのスタイルも重んじます。外来容器であるガラスコップで飲むことを下品とし、陶磁器製の徳利と猪口で飲む伝統的スタイルを是とします。そのようなジャパンスタイルを今だからこそ世界へ伝えて行くことに意味があるのではないでしょうか。普段（ケ）は質素堅実に、祭（ハレ）は神と繋がり、集団を大切にする。小さな世界平和がそこにあるように僕には思えます。さて、この続きは友人を呼んで一緒に酒でも飲みながらとします。