1日摂取量の基準:推奨量 成人男性:7.5㎎ 成人女性(月経なし):6.5㎎
成人女性(月経あり):10.5㎎
上限量 18~29歳男性:50㎎ 30~49歳男性:55㎎ 50~69歳男性:50㎎ 18~49歳女性:
40㎎ 50~69歳女性:45㎎
女性は月経や妊娠・出産により鉄が失われるため、男性よりも多くの鉄を必要とします。鉄の不足には段階があり、機能鉄(血液や筋肉に含まれる鉄)が不足するだけの初期段階では欠乏の自覚症状は表れません。これは機能鉄の不足を、貯蔵鉄(肝臓に蓄えられている鉄)が補っているからです。この状態は潜在性鉄欠乏と呼ばれ、女性の多くが自覚症状はないけれど鉄不足に陥っているのです。特に最近、女子中高生の貧血有病率が増加しているのも心配なことです。
鉄は、成人の体内に3~4gほどあると言われている微量元素です。約7割が赤血球のヘモグロビンの成分として存在し、残りは肝臓などに貯蔵されています。ヘモグロビンは、呼吸で取り込まれた酸素を体の隅々へ運ぶ役割を果たします。また、ビタミンB6とともに赤血球の形成に関わったり、エネルギー代謝や筋収縮、肝臓の解毒作用に関わる酵素等の構成成分となるなど、鉄はいろいろなところで体の機能を支えています。
鉄が不足すると、赤血球を作る材料が不足するため鉄欠乏性貧血になります。そうなると酸素がうまく運ばれないため、体が酸素不足となり、顔色が悪くなったり頭痛・倦怠感などが表れます。また、心臓への負担が大きくなり、動悸・息切れを起こします。鉄不足がひどくなると髪の毛や爪がもろくなったり、口腔粘膜が損傷したりすることもあります。一方、摂り過ぎは通常の食生活ではまずありませんが、大量摂取した場合には鉄沈着などの過剰症が起こります。
レバー、魚、貝類、大豆、ゴマ、海藻、緑黄色野菜など、鉄を含む食品は数多くあります。食品中の鉄には、動物性食品に多く含まれるヘム鉄と、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも吸収がいいので、鉄の摂取には効果的です。
非ヘム鉄は、ヘム鉄に比べて吸収率が約1/4と劣りますが、ビタミンCや動物性たんぱく質と合わせて摂ることで吸収率がアップします。また、果実酸やヘム鉄を組み合わせることでも、吸収がよくなるとされています。つまり、野菜や大豆などは肉や魚と組み合わせて摂るのがお勧めです。なお、タンニンやシュウ酸、食物繊維やリンの摂り過ぎは鉄の吸収を妨げる要因であるといわれていますが、通常レベルであれば、それほど問題にはならないようです。むしろ、いろいろな食品をバランスよく食べるよう心がけましょう。