これまでの“ひまわり”は、プールサイドに咲く大きくて粗野な花というイメージが強かったが、“サンリッチひまわり”の登場により、そのイメージも用途も大きく変わることになる。「“ひまわり”の品種改良をするにあたって、まずは子どもが目の高さで見る事ができる草丈の低い花壇用の“ひまわり”を作りたいと思いました。そこで出来たのが大阪の花博でグランプリをいただいた“ビッグスマイル”です」と羽毛田さん。そしてその品種改良の中で更なるヒントが生まれることになる。「様々な品種をかけあわせていく中で、私の目にとまるものがありました。放射状に花びらが広がる独特の形状で、シンプルで人を惹き付ける“ひまわり”を、もっと多くの人に見てもらいたい。その思いから室内で観賞できる切り花用の“ひまわり”の品種改良に取り組みました」。
花の品種改良は工業製品と異なり、基本的に一年に一回しか行うことができないため、一度方向を間違ってしまうと大変なことになる。「特に切り花用のひまわりは、一本に一輪の花しか咲かない一本立ちなので、交配の時期が極端に短くなります。ですので、交配させたい花の開花が遅れてしまうと、開花時期を調整しなければならないなど難しい状況になるのです」。
様々な苦労を経て1991年に発表された“サンリッチひまわり”。室内で生けられるひまわりが珍しかった当時は、ひまわりを花瓶に飾ったりするとこんなにいいものとは思わなかったという喜びの声が多かったという。花粉が出ないように改良することにより、色のコントラストがより鮮明になり、切り花用として急速に広がっていくこととなった。現在では世界的シェアを誇るまでになった“サンリッチひまわり”。タキイ種苗では、父の日に贈るメッセージフラワーとしての普及にも尽力している。「お子さんが自分で育てた“ひまわり”を、父の日にプレゼントする。そういった習慣が広まっていけば素敵ですよね」。
「品種改良は完成した時が充実感があるでしょ、とよく言われるのですが、私はそれに至るまでの経過や途中のステップに充実感があります。“ひまわり”は品種改良に成功した代表例ではありますが、たとえ上手くいかなかったものであっても、その取り組みは私にとって重要なのです」。今後は、栽培期間が短く早く出荷できるなど、生産者にとって有益な部分の改良に取り組んでいきたいという羽毛田さん。「花の品種改良は結果が出るまでに10年かかります。60歳で始めれば70歳になるまで結果がでないということです。私は出来る限り現役で品種改良に携わっていきたいと思っていますし、80歳になっても新しいスタートを切りたいとも考えています。もちろん結果に辿り着かないことも出てくるかもしれませんが、大事なのはそこまでの過程の中で様々な発見があるということなのです。
『EARTHTIME』の読者の方々も新しく何かを始めることを年齢を理由に躊躇することなく、思い切ってチャレンジしてもらいたいと思います」。
植物好きだった幼少期から現在に至るまで、花に魅了されてきた羽毛田さん。改良ではなくて創造に近いものがあると品種改良の魅力を語ってくれた表情からは、更なる新品種の創造意欲が満ちあふれていた。
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