蓑 豊「人が集まる場所にアートがあれば街は変わり、個々の人生も変わる」
蓑 豊(みの ゆたか)/兵庫県立美術館 館長
1941年生まれ。石川県金沢市出身。兵庫県立美術館・館長。金沢21世紀美術館の初代館長時代に年間150万人の入館者を集める。また現在も従来の美術館の概念を覆す取組みで、地域や経済の活性化に励んでいる。
蓑 豊 インタビュー

 日本各地でアートイベントが開催されるなど、ようやくアートの世界が盛り上がりをみせる今日この頃。関西でも「兵庫県立美術館」をはじめ、たくさんのミュージアムがアートを気軽に楽しめる展覧会やイベントを開催している。蓑さんは以前まで固苦しいイメージの美術館を払拭し、誰もが訪れられるくつろぎの場所として、さまざまな取組みを行ってきた。アートは新しい街づくり、経済の活性化などたくさんの可能性を秘めているという。




 「日本には美術館に訪れたことがない人があまりにも多く、芸術に触れる機会が本当に少ないと感じていました。美術館を知らないまま育ち、親になるともちろん子どもを美術館に連れていくことはない。それは非常に残念なことだと思います。私が30年間過ごしたアメリカやカナダでは、国民にとって美術館は日常生活の一部。ミュージアムショップで買い物をする、美術館のカフェで食事をする、時間があるので立ち寄る…そんな感覚で利用していました。しかし、日本では何か興味のある展覧会がないと訪れない。私は日本でも家族で楽しめることができる美術館を作りたかったのです」。
 そこで蓑さんは、生まれ故郷である石川県の金沢市に気軽に芸術に触れ、体感できる「金沢21世紀美術館」の初代館長となりこれまでの美術館の概念を大きく覆した。現在では年間150万人の入館者を集める観光名所にまでなり、街づくりに大きく貢献している。

 「たくさんの人がアートに触れるとたくさんの人の心が豊かになる。それは、良い街づくりに欠かせない大切な要素だと考えています。現在館長を務める「兵庫県立美術館」では、王子動物園から美術館までの道を「ミュージアムロード」と命名し芸術と文化を楽しめる道にしたり、隣接したバスケットコートで「3×3バスケットボール大会」などの楽しいイベントを開催するなどさまざまな取組みで人が集まるようになりました」。




 そんな蓑さんは、中学生時代に観たクールベの「追われる鹿」に衝撃を受けてからまさにアート人生。アートを追求するために多大なる努力を重ね、今では〝何かを追求する悦び〟をひとりでも多くの人に伝えたいと話す。
 「皆さんにはどんなアートでも構わないので何か惹かれる作品を見つけていただきたいですね。学ぼうと気負わなくていいんです。絵の中に動物がいたとか、女性がいたぐらいで十分。そこから興味が湧き、もっと知りたいと感じることができれば、それが楽しみになり生きがいになります。ひとつのことを深く追求することほどワクワクすることはないですよ。また、それが自分への誇りになり自信につながります。美術館に訪れる習慣を身につければ人生は豊かになる。ぜひアートに触れてみてください」。




 美術館に訪れることで目に見えて変化することはないが、体の内側で何かが変化し心が洗われる、そんな魅力的な場所だと蓑さんは話す。最後に美術館が初めてという人にアドバイスをいただいた。


 「まわりの人はみんな素人だと思って力まずにアートを楽しむことです。美術館はただ素晴らしい作品を並べているだけではなく、多彩なイベントも開催しますし、カフェやレストラン、ショップなどもあります。遊び感覚で気軽にお越しいただきたいですね。また、入場が無料や割引になる『ミュージアムぐるっとパス・関西2014』などを利用すれば、お得に美術館や博物館巡りができます。さまざまなアートに触れて、新しい感性が生まれることを願っています」。


 教育はもちろん、エンターテインメントやコミュニケーションも生まれる美術館。街をつくり、未来を築き、私たちをつなぐ存在となるだろう。




兵庫県立美術館
兵庫県立美術館
阪神・淡路大震災後「人間のこころの豊かさ」を芸術を通じて取り戻すことを目的にHAT神戸に誕生。美術を中心に積極的な芸術活動を展開し、未来を担うこどもたちの感性の涵養やこころの元気アップを目指す。新しい美術を創造する未来志向の美術館として話題に。

神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
TEL.078-262-0901
新規会員登録

最新のあすたいむ冊子

“第二の人生をおくるための生活応援情報誌『あすたいむ』 年4回季刊で発行!” 発行地域近隣のあすたいむ倶楽部会員宅へお届けしています。

巻頭特集
はじめての山歩き

全国のあすたいむ倶楽部