今までのミュージアム関連の鑑賞歴、接触人脈そして現在のミュージアム支援機会を生かして、様々な視点によるミュージアムの魅力等をご紹介しながら、アクティブシニアの皆様のゆとり生活設計支援ができれば幸いです。
木村 文男
ミュージアムぐるっとパス
関西実行委員会 事務局次長
兼 株式会社廣済堂 常勤顧問
E-mail : m-grupass-kimura@kosaido.co.jp
レンガの魅力溢れる旧館 六角堂を抜け高倉通に入った頃には、落ちてきた粉雪が風に押されて横なぐりの雪に変わった。その通りをまっすぐ歩くと「京都文化博物館」にたどり着く。顔をあげると、まっ白な雪のカーテンのむこうに赤レンガの建物が見え隠れする。京の街中で、大きなユトリロの動く絵画を見ているような風情に、すっかり洋画鑑賞の時間を持ち合わせた気分になっていた。やはり京都は絵になる街である。
ホノルル美術館所蔵の名品170点余りが網羅された『北斎展』が、京都市中京区にある「京都文化博物館」で2月1日から始まった(〜2012.3.25)。葛飾北斎の生誕250周年記念の展覧会で、1万点ほどの浮世絵版画が収蔵され、質の高さでも定評のある「ホノルル美術館」の協力による。しかも、そのコレクションの中核をなすのはミュージカル『南太平洋』の原作者、J・A・ミッチエナー氏の寄贈の約5,400点の作品だと言う。今回の展覧会は代表作「冨嶽三十六景」をはじめ「瀧廻り」「名橋奇覧」「北斎漫画」等々、初期から晩年にいたる画業全体を網羅しての画期的な展覧会に仕立て上げられていて素晴らしい。計算し尽くされた構図、ダイナミックな動き、悠然と構える靜の威力など作品が醸し出すたくさんの魅力に唸りながら、納得しながら、驚きまわる自分自身に気づいた。
角に立つ博物館表示板 この「京都文化博物館」は地下鉄烏丸御池駅のすぐ近く。7階建ての本館と重文指定の旧日本銀行京都支店を別館として公開している。この総合的な文化施設では、かつて千数百年の都として優れた文化を育み、日本文化の形成に大きな役割をはたしてきた京都の歴史と文化を解りやすく紹介している展示や映像文化紹介のフィルムシアター、各展覧会にて素晴らしい作品を紹介するミュージアム・ギャラリー等が観覧できる。昨年も「日本画 きのう・京・あす展」「ギッター・コレクション展」「京の小袖展」など、毎回魅力のある作品に出会う機会をいただき、今年も「平清盛展」「ヴェネツィア展」「シャガール展」などの展覧会が企画されている。この大きな展示のスペースを多様に生かしながら、多くの人々を惹きつけて止まない努力を続ける博物館の皆様には心から拍手をお送りしたい。
本館正面入り口付近 昭和61年〜63年秋の開館に向けて、展示施工広報のお手伝いをさせていただいた一人として、愛着のある素敵な施設だと思っている。そのほか1階の洗練されたミュージアムショップや解りやすくシンプルに掲示された広報設備や“おもてなしの心”を携えた受付の対応など、「物と心」が呼応し合った魅力がじわじわと理解され拡がりつつある。
満足しきった2時間を抱えながら玄関を出るとすっかり青空が戻っていた。烏丸三条の通りに出ると若者のいっぱいの笑顔とすれ違った。この界隈がますます活気溢れる文化情報発信の場として発展するような妙な確信を抱きながら、その博物館をあとにした。