第七回　身近なミュージアムを、気軽に訪ねて「国立国際美術館」

　ビジネス街にほど近い都会の真ん中、中之島にある身近な美術館である。ぶらっと気軽に立ち寄れる場所にある立派な美術館である。にもかかわらず行政の感覚が「日常生活の中の文化」の匂いを遠ざけている。私自身リラックスしながら足を向けるまでにどれだけの時間を費やしたことか。いやそれでもまだ、ぎごちなさを引きずったままである。ただそれらの見え隠れする現象は立地でも作品群でもなく、あくまでも「うつわとひと」のなせるわざであり展示作品とは別の話である。

国立国際美術館　正面外観　今月（2011.10月）から、その「国立国際美術館」で素晴らしい作品を目にできる展覧会が始った。「国立国際美術館」と「大阪市立近代美術館建設準備室」の連携による20世紀の西洋美術を中心とした親しみやすい館蔵品展「中之島コレクションズ」である。是非この機会に魅力あふれる作品にわずかな観覧料でゆったりと出会い感動の時空が共有できることを噛みしめてほしい。これこそ館所有の素晴らしい作品がさり気なく公開される「常設展」「所蔵品展」等と呼ばれる価値ある展覧会である。これらの展覧会に気軽に通うことで、“なるほど”心豊かな気持ちに育まれた日常生活が手に入れられると思う。
　ちょうど「中之島コレクションズ」開会の翌日、朝日放送の依頼でミュージアム紹介放映の機会をいただき、この展覧会の説明の時間を作った。その紹介にも登場したモディリアーニの「髪をほどいた横たわる裸婦」の作品はちょうど10年前の館蔵品展で出会い感動に震えたまさしくその作品である。35歳で生涯を終えた彼の伝説とともに描かれた哀愁に満ちた女性像や人物像、そして官能的な多くの裸婦像は今でも多くの人達を惹きつけてやまない。あの虜になった出会い以来2001年と2007年には日本全国モディリアーニ作品鑑賞三昧の一人旅を実施した。日本にも彼の作品は沢山あるが、今回のこの作品以外に「お下げ髪の少女（名古屋市美術館蔵）」と「黒いネクタイの女（フジカワ画廊蔵－残念ながら非公開）」がとにかく好きでたまらない。

楽しいミュージアム・ショップ 　空へ突きあげる現代的な建物は完全地下型美術館として、中之島に2004年に移転・新築オープンした「国立国際美術館」であり、現代美術の発信基地として美術動向の紹介や人と美術の交流の場をめざしている。地下のスペースには充実した楽しいミュージアムショップやゆったりしたレストランがあり、より快適な鑑賞の場を創造している。この中之島地区には文化継承の拠点として他に市立東洋陶磁美術館や開館時に展示施工のお手伝いをさせていただいた市立科学館などがある。またすぐ隣には近代美術館設立構想があると聞く。私の2001年度の美術鑑賞記録を見ると、「大阪市立近代美術館（仮称）」コレクション展のチラシに「大阪市は芸術文化を発信する国際都市をめざし、近代美術館の建設計画を進めています」との記述がある。以来10年、今日まで残念ながらその言葉は具現化されておらず、文化行政への失望の時が続いている。

※この国立国際美術館にて開催中（〜2011.12.11）の「中之島コレクションズ」展は『ミュージアムぐるっとパス・関西2011』を持参利用すると無料で入場できます。また、地下のミュージアムショップにて購入もできます。