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第67回 日本庭園の変遷を巡る⑨(安土桃山時代/醍醐寺三宝院庭園)

安土桃山時代は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三雄が天下統一を争った戦乱の世で、室町幕府が消滅した1573年から関ヶ原の合戦の1600年までをいい、その間わずか28年にすぎない。
安土桃山時代には、中世を通じて発展してきた書院造りが建築様式として最終的に確立し、建物内での主客の位置が固定することになる。その結果、定まった視点からの庭景を強く意識するという「書院造庭園」の考え方(庭園様式ではなく、建物との関係に基づいた分類呼称)が確立する。そこでは、必然的に人目を惹く名石や豪華な石組、あるいは珍しい植栽などが大きな役割を果たすことになる。

秀吉自ら基本設計をした庭園

醍醐寺は空海の孫弟子にあたる理源大師聖宝(しょうぼう)が開山したもので(874年)、当初は山頂一帯を中心とした修験者のための霊場(上醍醐)であった。その後、醍醐天皇が祈願寺として醍醐山麓の広大な平地に大伽藍(下醍醐)を造営。上醍醐と下醍醐は徒歩で一時間程の険しい山道で隔てられている。
応仁の乱や度重なる火災などですっかり荒廃するが、秀吉の帰依を受け、住職の義演准后(ぎえんじゅごう)のもとで目覚ましい復興を果たす。
三宝院は玄関から葵・秋草の間、表書院、純浄観(じゅんじょうかん)・護摩堂が続き、北側に宸殿(しんでん)、庫裏(くり)などが連なる大建築である。表書院には外部から直接入るための唐門がある。表書院は室町風の古式の平面形式を残しているが、畳が敷き詰められて華麗な障壁画で飾られた桃山時代の豪快で華麗な雰囲気を味わえる。
三宝院の池泉庭園は、秀吉自ら醍醐の花見に合わせて縄張り(地割り設計)したものであるが、秀吉の死後、義演の指導により30年以上にわたって築造・改修が続けられ作庭されたものである。
池泉庭は幅が55メートルあり、名石による護岸石組が美しい。奥に三段の滝があり、上中下の滝の向きを変えることにより、水の落下方向を三方に分けている。石組を行ったのは賢庭(けんてい)という庭師で「石組天下一」といわれ、小堀遠州(近江小室藩主で茶人・作庭家でもある)の作庭にもかかわっている。
池泉には鶴島・亀島が築かれ、両島の背後には蓬莱石組が連山形式で組まれていて、全体で神仙蓬莱の世界を表現している。庭の中に神仙思想を表現するのは、奈良時代からの伝統であるが、庭園に神仙島が築かれた当初、そこは未知の世界の象徴として橋が架けられることはなかった。しかし、戦国の乱世を生き抜いた武将たちにとってはただ遠くから眺める存在ではなく、自ら足を踏み入れたい世界であったようだ。こうしたことから、以降、神仙島への架橋が一般的になっていく。


三段の滝(橋の左奥)

亀島(向かって左)・鶴島(向かって右)

天下を治めるものが所有する石

池の南岸には天下を制するといわれ、いわば権力の象徴でもあった名石、藤戸石(ふじといし)が立つ。奥宸殿(おくしんでん:非公開)の玉座の正面に位置し、左右に脇石を従え、三つの石をバランスよく配置した三尊形式{中尊と左右の脇侍(きょうじ)からなる三尊仏になぞらえた石組}に組まれている。三尊石組は日本庭園における石組の基本である。平安時代に著された『作庭記』には「石をたつるに三尊仏の石はたち、品文字の石はふす常事也」とあり、三尊石組が古くから用いられてきたことを物語っている。金閣寺や銀閣寺の石組の手本となった西芳寺の霞形中島の三尊石が三尊石組の古い例として名高い。
藤戸石は足利義政遺愛ともいわれ、倉敷市の藤戸町で採取されたとされている。織田信長が最後の足利将軍義昭(よしあき)のために二条第(にじょうだい)を造営した時に細川家から献納されたもので、信長はこの石に錦の布を被せ、二条第まで運んだ。信長亡き後に秀吉の聚楽第に移され、最後にここに納まった。秀吉は天皇の行幸を仰ぎ、この名石を披露する心つもりだったようだ。
三尊石組の斜め後ろには秀吉を祀る「豊国稲荷(ほうこくいなり)大明神」が建つ。醍醐寺全体の復興に尽力した太閤秀吉の恩に報いるために建立されたもので、もともとは、秀吉を神格化した豊国大明神として祀られていた。しかし、豊臣家の滅亡後、徳川幕府に破却されてしまうので、稲荷社と名を変えて存続。現在は両方の名をとって「豊国稲荷大明神」と称されている。毎朝三宝院本堂に出入りする僧侶は、大明神ならびに藤戸石への合掌拝礼を欠かさないという。


藤戸石とその斜め後ろの豊国稲荷大明神祠

三宝院庭園

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