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歴史コラム

Presented by 歴史街道推進協議会歴史街道

第76回 「歴史街道」とは

「顔のない経済大国」のイメージを払拭するために

昨今、何かと話題になるインバウンド。前年2017年の実績は約2,700万人で、来年のラグビーワールドカップ、その翌年の東京オリンピック・パラリンピックと国際的なビッグイベントの国内開催が続くことで、国は、訪日外国人旅行者数を2020年に4千万人、2030年に6千万人、また、その旅行消費額を2020年に8兆円、2030年に15兆円とする目標として掲げている。

関西は日本の国宝の6割、重要文化財の半分、国指定の史跡名勝の3割が集中する歴史文化の宝庫で、先人たちが築いたこれらの遺産は世界に誇れるものである。
関西が有する歴史文化資源を継承・活用し、関西の魅力の一つとして国内外に情報を発信していく「歴史街道計画」の構想はバブル景気に浮かれる1980年代後半に発案された。
日本が海外から「顔のない経済大国」と評され、効率性、経済性のみを重視してきた姿勢を省みて、歴史、文化、心など日本の良さを再発見しようと、歴史の舞台となった『伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸を結ぶルートを「歴史街道」と名付けて、日本人はもとより外国の方々にもこの歴史街道を訪れていただき、日本の文化や歴史を身体で感じて欲しい』という思いで生まれた。
ちなみに、「世界を考える京都座会」(座長:松下幸之助)よりこの「歴史街道づくり」の提言が発表された1988年当時のインバウンドは約240万人であった。

より多くの人々に、関西の豊かな歴史文化資源に触れていただき、日本文化の本質を知っていただくことを活動理念としている歴史街道計画にとって、インバウンドの増加は真価を発揮すべき時で、まさに好機到来と考えられる。 提言以降30年の時を経た今、国内外を取り巻く環境は大きく変わってきているが、当時の提言文(以下に掲出)を再読し「歴史街道計画」の真髄をあらためて再確認したい。

「歴史街道」づくりの提言

外国人に「日本について何を知っていますか」と尋ねると、まず返ってくるのは商品と企業の名前です。経済大国の日本としてそれは当然でしょうが、それ以外のことがほとんど知られていないのは寂しいことです。文化や歴史、功績ある人々の名前などがほとんど知られていないのです。
「人間の顔のない経済大国」、「商品を吐き出すブラックボックス」。日本に対するこうした評価は正しいものではありませんが、私たち日本人もこれまでは、自国の文化や伝統、こころや生活感覚を世界に知らせようという意識が薄かったことも事実でしょう。いや今も、日本の文化やこころを知らせるのは、貿易摩擦のため、よりよい経済関係を深めるため、つまり経済が目的で文化やこころの問題はそのための手段という気持ちがあるのではないでしょうか。
さらにいえば、私たち日本人自身も、物質的な豊かさ、物理的環境の快適さや便利さを追い求めるのに忙しく、その根底にある日本の文化や伝統や特有の発想について考える余裕を失っているきらいがあるのではないでしょうか。

今や日本は、世界の16%もの生産力をもち、世界の総輸出の5%にも当たる貿易黒字を計上し、世界中の貯蓄の半分以上を占める巨大な経済力をもつようになっています。日本の経済は、私たちの実感をはるかに超えて、国際化し巨大化しているのです。このままでは日本は「金儲けにしか関心のない国」という評価が定着してしまう恐れがあります。
このような現実を超え、日本人自身も外国の人々にも、長い歴史に培われた日本の文化とこころを深く認識するような実効ある具体的な計画を考える必要があると考えます。
そこで、私たちが着目したのは、日本の文化、日本人のこころが形成された過程を、その現場において見聞することです。
独特の風土を持ったこの国土で生まれた日本文化には、特有の性格があります。同時に世界にも類例のないこの国土の文明的位置の故に、東洋と西洋の文明を巧みに吸収し消化することもできました。現代の日本の文化と日本人のこころは、そうした歴史の成果として築かれたものです。従ってこれを正しく認識し深く理解するためには、歴史現場においてそれぞれの時代の文物と環境を味わうことが大切でしょう。
文化を知りこころを解するためには、書かれた文章を覚え、並べられた事物を知るだけでは充分ではありません。体験の記憶と自ら試みた実感をもって親しみひたるのでなければ、本当の文化を知ることにはならないのではないかと思います。
このような考え方から、私たちは日本の文化と歴史を体験し実感する旅筋、いわば「歴史を楽しむルート」としての「歴史街道」の開発整備を提唱するものです。

幸いにして日本では、主要な歴史の現場を、ほぼ歴史年代の順に訪ねる旅をすることができます。それは、さほど遠い距離でもなくあまり長い時間をかけることもない範囲にあります。つまり、「勤勉に楽しむ」日本人の性格にも、短い日数で日本を訪れる外国人にも、無理なく巡れるルートとなり得るのです。
この「歴史街道」構想は、日本人のこころに伝えられてきた「生なり」の文化の源流というべき神話の地・伊勢からはじまり、古代から中世にかけての三つの都-飛鳥、奈良、京都-とその近郊を巡り、秀吉以降の商人文化の中心地「大阪」、明治以降の国際交流を象徴する神戸を結ぶことになります。
勿論、日本文化の最も古い歴史をもつこの地域には、多くの歴史文物があり、伝統的な行事や芸術技能が保たれております。また、隠された文物や知られざるこころの跡も多いことでしょう。さらにこれから追加すべき「もてなし」のハードやソフトの開発も重要になるでしょう。新しい技術や思想を吸収し活用してきた日本の歴史そのままに、高度な技術や斬新な発想を導入しなければならないことも多いに違いありません。快適な移動方法や多彩な楽しみの導入も大切です。「歴史街道」は、常に開発され更新される知的な観光ルートでなければならないと思うからです。

文化は突如として興るものではありません。伝統を大切にしない文化が長く栄えたためしはなく、新しい技術と発想の導入なしに長く保たれた伝統もまたありません。豊かな国になった日本は、その歴史とこころに根づいた文化を、歴史の現場から世界に発信する必要があります。私たちは、この「歴史街道」を現代に生かすことが、二千年の日本の歴史に新しい楽しみを加えると共に、百年後、千年後に現代の英知と繁栄を伝える試みでもあることを願うものです。
今、日本では新しい街づくり、新しい国際交流の場の建設が進められていますが、同時に先人から受け継いだ歴史の現場を、新たな知的興奮の舞台にすることも大切ではないでしょうか。(1988年3月「世界を考える京都座会」より)




歴史街道推進協議会 http://www.rekishikaido.gr.jp

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