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歴史コラム

Presented by 歴史街道推進協議会歴史街道

第85回 歴史街道「かつての伊勢の台所 河崎」

伊勢神宮への参拝者でにぎわう伊勢市は、三重県の中東部に位置する。周辺には伊勢志摩国立公園の海辺のリゾート観光地があり、海の幸、山の幸にも恵まれ、京阪神や名古屋方面からの観光客が多い。

勢田川と河崎商人


河崎のまちなみ

河崎の町は室町時代の中ごろに勢田川のほとりを埋め立てて田畑にし、原野を拓いて宅地を造成して生まれた。 伊勢市北部を流れる勢田川を利用した水運によって、戦国時代末から本格的に商業の町としての機能を整えはじめ、安土桃山時代に伊勢神宮周辺の経済の中心地となった。江戸時代には大きな問屋街へと発展し、明治、大正時代を通じて商人の町として繁栄、昭和時代初めまで商業の中心としてその機能を保ち続けた。
勢田川は伊勢市南部の鼓ヶ岳に源を発する全長わずか7kmの小河川だが、満潮時には水が伊勢湾から逆流して、満々と水をたたえ天然の運河となる感潮河川である。
この満潮時を利用して、荷物を満載した舟が難なく川をさかのぼり、河崎の町へさまざまな生活物資を運んだ。当時は蔵や町家が川の両岸に建ち並び、直接船から物資を蔵に入れることができるようになっていた。



伊勢河崎商人館

河崎の町に集積された物資は地元の人びとの生活物資はもとより、江戸時代からは伊勢神宮の参宮客への物資を供給する「伊勢の台所」として栄えた。
しかし、戦後になって陸上輸送が急速に発達してトラック輸送が物資輸送の主流を占めるようになると、店舗の多くは陸上輸送に適した郊外の地域へ店を移し、店じまいする問屋も増えた。
こうして衰退の道をたどり始めた河崎の町には、甍(いらか)の波が続く懐かしい街並みだけが残されたが、その景観も、1974年(昭和49)7月7日の「七夕水害」を契機にした勢田川河川改修工事によってその姿を一変した。
しかし、伊勢の経済の中心地を誇った河崎の歴史遺産を朽ちさせることなく、有効利用しようとの動きが生まれ、いろいろな人びとが立ち上がった。川に沿って続く歴史ある町並みの景観は、今もなおそれら町の人々によって守り育てられている。


伊勢河崎商人館


河崎商人蔵

「商人の町・河崎を後世へ残そう」とする人たちの熱意の現れのひとつとして、2002年(平成14)に「伊勢河崎商人館」がオープンした。江戸時代からの酒問屋を営んでいた小川酒店の蔵7棟、町家2棟など、延べ1000㎡の商家が伊勢市へ寄贈された。市は敷地を買収して建物を修復整備し、管理運営を「NPO法人伊勢河崎まちづくり衆」にまかせた。
三つの大きな蔵には26のミニ店舗が入り、日常生活で使う雑貨、食品などの販売と展示をしている。母屋は伊勢河崎商人館の中心施設で、商家の和室と京都・裏千家の茶室・咄々斎(とつとつさい)を模した茶室、商家の道具、資料などを展示している。ほかに蔵を利用したイベントホール、伊勢と河崎の歴史と文化資料を展示した「河崎まちなみ館」などがある。


商人館内茶室

土蔵を利用した展示室

河崎の伝統工芸


河崎伊勢まちかど博物館

河崎の町には妻入造りの町家が多い。伊勢地方では伊勢神宮の正殿が平入造りなので、一般民家は伊勢神宮に遠慮して妻入造りにしたと伝えられている。切妻の瓦屋根がギザギザのノコギリのように続く河崎の町並みは、甍(いらか)の美しい町だ。
河崎の町家と蔵は黒く、強く、高く、重厚で、河崎商人の力強さと活気を現している。特に商品や財産を守る蔵は、土壁を20~30cmも塗り重ね、外側を漆喰で仕上げ、さらに「きざみ囲い」と呼ばれる外囲いの板で覆われている。「折れ釘」と呼ばれる太い釘で取り付けられている外囲いは、火事の時、折れ釘を抜いて取り外すと漆喰塗りの壁が現れ、延焼を防ぐようになっている。
妻入造りの瓦屋根にもふっくらとふくらみを持った「むくり」、はねあがったような形の「そり」、真っすぐな直線の「すぐ」と呼ばれる、さまざまな形があるのにも興味を引かれる。
河崎の商人たちは重厚で強い建物に情緒を持たせるために屋根瓦にも凝ったようで、各家ごとに意匠を凝らした面白いものが見られる。家紋や文様をデザインした鬼瓦のほかに、波や雲、亀、鯉、蛙など水に関係したものを象った隅蓋(すみぶた)瓦が屋根にあがっている。昔は火事が多かったと言う町だったので、水に関係する隅蓋瓦に火除けの願いをこめると同時に、家屋に対する美意識のレベルの高さがうかがえ、これらの注文に応じられる高い技を持った瓦職人もいたようだ。


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