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京の達人が教える京都に住む魅力
  • 京の達人が教える京都に住む魅力
  • 京都で楽しめる季節行事
歴史・伝統・文化・自然・グルメなど、たくさんの人々を惹きつける古都・京都。しかし、私たちがまだ知らない京都の顔がきっとまだ数多くあるはずに違いない。そこで、京の文化を守り続ける職人に、住んでこそわかる魅力を伺ってみた。
壮大な自然の輪廻を感じ 伝統ある京都の庭園を慈しむ 素晴らしい庭が 点在する京都。 日本を象徴する 文化がここにある
加藤 友規 さん
植彌加藤造園株式会社の代表取締役社長。数多くの庭と接し、確かな技術をもって「人が豊かになる庭」を追求。時間の経過とともに変化する庭を美しく維持管理していくことに魂をこめ、京都の景色を育み続ける粋な庭師。平成24年度日本造園学会賞(研究論文部門)を受賞するなど、造園学の博士(学術)としても活躍。

「自然との共存」「人の心」を大切に
伝統の技をかたちにする京の匠

 全国屈指の庭園都市・京都。そこで嘉永元年(1848年)創業以来、京の庭園を育み続ける「植彌(うえや)加藤造園」。現在、このプロの職人集団60名をまとめているのが8代目加藤友規さんだ。「南禅寺」「くろ谷 金戒光明寺」など趣きある庭園のほか「けいはんな記念公園」など最新の技術を駆使した庭園まで手掛け、その卓越した技術と感性は一目置かれる存在に。

 「初代が御用庭師を務めた南禅寺の方丈庭園は江戸時代初期の代表的な枯山水庭園。巨大な石をリズミカルに配置する手法で『虎の子渡し』の庭と呼ばれています。また、金戒光明寺の庭園『紫雲の庭』は法然上人の幼少時代、修行時代、浄土開宗・寺門興隆時代の3つのエリアで構成され、上人のご生涯を表しています。秋には特別公開があるのでぜひ訪れていただきたいですね。庭というものはずっと同じかたちをとどめるものはひとつとしてなく、時代と共に変化を遂げていくもの。また壮大な自然の輪廻をベースに、人の創造や想いが組み込まれた庭は何百年、何千年と愛でられていくのでしょう。そんな庭と向き合う庭師は、人や自然に対する優しさ、思いやりを持つことが大切です」。そう話す加藤さんは物心ついた幼少の頃から職人さんたちと一緒に過ごしてきた。自身が庭師になったのも自然の流れだという。「庭師の仕事は新しい景色を生み出すこともあれば、代々受け継がれてきた景色を守り、さらに育んでいくこともあります。これから長い歴史を刻む庭に少しの時間ですが携わることができる、これが何より庭師の醍醐味でしょう。また、伝統的な考えや技法を守りながらも創造的なものを付加し、感動を与えることができればそれはまた新しいひとつの伝統となります。こうして私たちの手掛けた庭が後の時代に継承される、これもまた庭師の魅力ですね」。京都の素晴らしい庭園文化を多くの人に知ってもらいたいと願う加藤さん。

 最後によく訪れる場所を伺うと「出町橋付近は『東山三十六峰』が見渡せる穴場スポット。特に比叡山から大文字山までの稜線は別格ですね。そこには8000万年前の地殻変動からなる物語があり、庭師にとっては感慨深い場所です」。京庭園をはじめ、至るところに古き良きストーリーが根付いている京都。観光だけでは知り尽くせない魅力がまだまだ隠れている。

植彌(うえや)加藤造園株式会社

創業嘉永元年(1848年)より、洛東鹿ヶ谷の地にて160年間代々続く歴史ある造園会社。文化財庭園の維持管理をはじめ、寺院庭園、別荘庭園、公共庭園の伝統技法による整備・管理とともに、各種住宅庭園の施工管理も手がける。また近年では、京都府の指定管理者として「けいはんな記念公園」の経営に携わるなど、ソフトからハードまで一貫した総合造園サービス会社としても注目されている。
TEL:075-771-3052/京都市左京区鹿ケ谷西寺ノ前町45

京都は人が看板を持つ独特な街 酒造りの楽しさ 美味しさを より身近に 感じてほしい
藤岡 正章 さん
お酒によって手のかけ方を変える製造ではなく、すべて手造りにこだわる。今年は自身が育てた米で日本酒を作るというプロジェクトも始動。酒造りへの探究心は計り知れない。

良質な伏流水が豊富な伏見で
日本酒の美味しさを伝える蔵元

 明治35年創業、最盛期には八千石程のお酒を製造していたという「藤岡酒造」。しかし、三代目のご不幸がきっかけとなり平成7年の“造り”を最後に酒造の歴史に幕を閉じた。そんな中「もう一度お酒を作りたい」と復活を遂げたのが5代目藤岡正章さん。現在では「蒼空」ブランドを立ち上げ、手間ひまかけた酒造りに励んでいる。
 「伏見は以前に“伏水”と書いたほど良い水が豊富に湧き出る土地。その中でも当社は東から流れる白菊水において最も上流にある井戸の上質な水を使用しています。全て手造りなので多くの量は造れませんが、滑らかで優しい味を目指しています。また私が大切にしていることは作り手と飲み手の顔が見える酒造り。京都は人とのつながりを大切にする町ですからね。私が河原町にある醸造酒専門BAR「醸造庭」に訪れる時も日本酒を飲みにというより店主に会いに行く感覚です」。さらに散歩によく立ち寄るという緑溢れる「桃山御陵」。 京都は魅力的な人や自然がいっぱいだと藤岡さんは話す。

藤岡酒造株式会社

「蒼空」純米酒(500ml)1,600円〜の販売のほか、酒蔵Bar「えん」では生まれたての日本酒を仕込み蔵を眺めながらゆっくり楽しめる。また「クリームチーズの酒盗のせ」490円など、日本酒に合うちょこっとおつまみもあり。「蒼空」1杯純米酒420円、純米吟醸生酒450円。純米大吟醸酒500円。※価格は全て税別価格
TEL:075-611-4666/京都市伏見区今町672-1/11:30~18:00(酒蔵Barえん)/水曜休み

移りゆく景色も京都の魅力のひとつ 京都の風景や文化・娯楽は時代と共に変化する
正田 吉郎 さん
京都四條南座で勤務し、退職後はまねき書きを陰で支えるサポート役。観光客が知らない静かな場所をよく知る京都人。

京都四條南座を裏で支え続ける
在住歴81年、京都の達人

 「毎年11月、顔見世興行に出演する役者の名前(まねき)看板が南座の正面に上がりますが、私の役目はそのまねきの墨を作ること。“削り墨”を巨大なすり鉢に入れ、野球のバットで滑らかになるまでするという体力勝負の仕事です」。
 そんな正田さんは南座をはじめ、京都の移り変わりを見てきた貴重な存在。昔はよく寺院で遊んでいたと話す。「今でこそ京都の寺院は歴史的建造物として重宝されていますが、私にとっては生活環境の一部。子供の頃は円山公園を通ってよく将軍塚へ訪れていました」。将軍塚からの展望は京都観光の絶景スポット。今では正田さんの癒しの場となっている。

京都四條 南座

元和年間(1615~1623年)京都四條河原に公許された7つの櫓の伝統を今に伝える唯一の劇場。平成3年には内部を全面改修し、最新設備の近代劇場に。
TEL:075-561-1155/京都市東山区四条大橋東詰

人が伝統を受け継ぐ店づくり 短期間では知り尽くせない自然、歴史が溢れている京都
森 一也 さん
「鼓月」本社にて京都ならではの五感で感じるお菓子を製造。歴史文化と自然が共存する場所によく訪れ、仕事の糧にしている。

古き良き伝統技術を守りながら
さらなる革新を目指す和菓子職人

 昭和20年に創業し、現在では全国70店舗展開する「京菓子處鼓月」。伝統的な京菓子を提供するほか、斬新なアイデアで和菓子の概念を覆す商品を生み出すこちらにも京都人がいる。「京都には古くから続くお店がたくさんあります。当社もそうですが、何代もの人が伝統や文化を受け継ぎながらも、新しいものを作っていく。時には悩むこともありますが、それを乗り越えてお客様に美味しいものをお届けできた時は感無量ですね」。
 河川敷や寺院などを少し歩けば自然が溢れ、和菓子作りのヒントがたくさんあると話す森さん。鼓月の和菓子は京都の自然や人の魅力が詰まっている。

京菓子處 鼓月 茶房華心・祇園店

店頭での販売のほか、奥には茶房があり、くつろぎの場としても親しまれている老舗和菓子店。歌舞伎鑑賞の帰りにも立ち寄れる。
TEL:075-533-6132/京都市東山区四条通川端東入(南座東隣)/10:00~20:00

京都で楽しめる季節行事
春

神幸祭(おいで)

4月20日(日)
毎年4月20日以降の第1日曜に行われる千年以上の歴史を持つ行事。11時頃に榊御面を先頭に唐櫃と神輿6基が境内を出発し、正午頃より日本庭園の最高の名園といわれる桂離宮の東北側から桂川を船で渡る船渡御が行われる。神輿が陸にあげられる光景は圧巻。また、3週間後の日曜には還幸祭(おかえり)が行われる。
10:00~/松尾大社/京都市西京区嵐山宮町3/TEL:075-871-5016正午頃〜/桂離宮/京都市西京区桂御園

葵祭

5月15日(木)
日本で最も優雅で古趣に富んだ祭として知られる京都三大祭のひとつ。京都御所を出発、堺町御門から総勢500名以上の行列が下鴨神社を経て上賀茂神社へと向かう。
10:30頃~/京都御所・下鴨神社・上賀茂神社/有料観覧席(京都御苑、下鴨神社参道):1席2,050円(全席指定)/TEL:075-752-7070(京都市観光協会)

水景園のホタル鑑賞会

5月24日(土)〜6月15日(日)
※木曜は開催なし
水と緑溢れる日本庭園を舞う幻想的なホタルが楽しめる毎年人気の鑑賞会。ほかにも、コンサートやホタルのミニ講座などお楽しみが満載。ぜひ家族で訪れたい。 19:00~21:30(受付終了21:00)/けいはんな記念公園 水景園/京都府相楽郡精華町精華台6-1/大人300円、小中学生150円/TEL:0774-93-1200
夏

祇園祭

7月1日(火)〜31日(木)
※山鉾巡行 前祭7月17日(木) 後祭7月24日(木)
日本三大祭のひとつに挙げられる八坂神社の祭礼。祭事が1ヶ月にわたる大規模なものであることで広く知られ、平成21年には国連教育科学機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録。平成26年から山鉾巡行は17日の前祭巡行(23基の山鉾)と24日の後祭巡行(10基の山鉾・49年ぶりの復興)の2度の巡行が行われる予定。
9:00頃~/八坂神社ほか/有料観覧席(御池通):3,180円(全席指定)/TEL:075-752-7070(京都市観光協会)

嵐山 鵜飼

7月1日(火)~9月15日(月)
鵜飼は海鵜を飼いならして鮎などの川魚をとる伝統的な漁法で、その歴史は古い。夏の嵐山ならではの風雅な世界を楽しんでみては。
19:00~21:00(9月1日~は16:30~20:30)/嵐山(渡月橋付近)/乗合船:大人1,700円、子供850円/TEL:075-861-0302(嵐山通船株式会社)

京都五山送り火

8月16日(土)
京都の夏を代表する風物詩。東山如意ケ嶽の「大文字」をはじめ、金閣寺附近の大北山の「左大文字」、松ケ崎西山と東山の「妙法」、西賀茂船山の「船形」、上嵯峨仙翁寺山の「鳥居形」がある。
20:00~/京都市内各所
秋

時代祭

10月22日(水)
葵祭・祇園祭とともに京都三大祭のひとつとして京を代表する行事。当日は午前7時に神宮で神幸祭が行われその後、神幸の御鳳輦が9時に出発して京都御所へ。さらに御苑建礼門前で行在所祭執行の後、参集の時代行列と合して建礼門前を出発。午後2時30分頃には神宮に還幸され還幸祭が行われる。
7:00~/京都御所~平安神宮/有料観覧席 (京都御苑、御池通、平安神宮道):1席2,050円(予定)/TEL:075-752-7070(京都市観光協会)

金戒光明寺
秋の特別公開

11月1日(土)~12月7日(日)
紅葉の名所として知られる金戒光明寺。枯山水庭園「紫雲の庭」をはじめ、境内には至るところに美しい景観が点在している。名仏師・運慶の作と伝わる文殊菩薩像や、遣唐使・吉備真備ゆかりの吉備観音像(重文)、仕掛けのある「虎の襖絵」などの寺宝も特別公開され、見どころも満載。
9:00~16:00(受付終了)/金戒光明寺/京都市左京区黒谷町121/御影堂・大方丈・庭園:大人600円(山門:大人800円)共通券もあり/TEL:075-752-7070(京都市観光協会)
冬

京都・嵐山花灯路
-2014

12月中旬~下旬
嵯峨・嵐山一帯の散策路を約2,500基もの露地行灯の「灯り」といけばな作品の「花」で演出するほか、周辺の寺院・神社、文化施設などのライトアップも行われる。ロームのLED電球を使用した、あたたかみある灯りの散策路を歩けば寒い冬でもほっこりした気持ちになること間違いなし。また渡月橋や竹林の小径は、昼とはまた違った幻想的な情景が広がり、一見の価値あり。
17:00~20:30(点灯時間)/嵯峨・嵐山一帯/TEL:075-212-8173(京都・花灯路推進協議会事務局(平日10:00〜18:00))

青蓮院 夜の特別拝観

10月24日(金)〜12月7日(日)
毎年春と秋に開催される夜の特別拝観。青色に輝くライトアップには大小1,000もの照明が使用され、幽玄な雰囲気を醸し出している。また、諸堂の内部拝観の後は、庭園を直接散策できるのも嬉しいかぎり。この時期しか味わえない光の世界を満喫しよう。
18:00~22:00(最終受付21:30)/青蓮院/京都市東山区粟田口三条坊町/大人800円、小中高生400円/TEL:075-561-2345
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