全国屈指の庭園都市・京都。そこで嘉永元年(1848年)創業以来、京の庭園を育み続ける「植彌(うえや)加藤造園」。現在、このプロの職人集団60名をまとめているのが8代目加藤友規さんだ。「南禅寺」「くろ谷 金戒光明寺」など趣きある庭園のほか「けいはんな記念公園」など最新の技術を駆使した庭園まで手掛け、その卓越した技術と感性は一目置かれる存在に。
「初代が御用庭師を務めた南禅寺の方丈庭園は江戸時代初期の代表的な枯山水庭園。巨大な石をリズミカルに配置する手法で『虎の子渡し』の庭と呼ばれています。また、金戒光明寺の庭園『紫雲の庭』は法然上人の幼少時代、修行時代、浄土開宗・寺門興隆時代の3つのエリアで構成され、上人のご生涯を表しています。秋には特別公開があるのでぜひ訪れていただきたいですね。庭というものはずっと同じかたちをとどめるものはひとつとしてなく、時代と共に変化を遂げていくもの。また壮大な自然の輪廻をベースに、人の創造や想いが組み込まれた庭は何百年、何千年と愛でられていくのでしょう。そんな庭と向き合う庭師は、人や自然に対する優しさ、思いやりを持つことが大切です」。そう話す加藤さんは物心ついた幼少の頃から職人さんたちと一緒に過ごしてきた。自身が庭師になったのも自然の流れだという。「庭師の仕事は新しい景色を生み出すこともあれば、代々受け継がれてきた景色を守り、さらに育んでいくこともあります。これから長い歴史を刻む庭に少しの時間ですが携わることができる、これが何より庭師の醍醐味でしょう。また、伝統的な考えや技法を守りながらも創造的なものを付加し、感動を与えることができればそれはまた新しいひとつの伝統となります。こうして私たちの手掛けた庭が後の時代に継承される、これもまた庭師の魅力ですね」。京都の素晴らしい庭園文化を多くの人に知ってもらいたいと願う加藤さん。
最後によく訪れる場所を伺うと「出町橋付近は『東山三十六峰』が見渡せる穴場スポット。特に比叡山から大文字山までの稜線は別格ですね。そこには8000万年前の地殻変動からなる物語があり、庭師にとっては感慨深い場所です」。京庭園をはじめ、至るところに古き良きストーリーが根付いている京都。観光だけでは知り尽くせない魅力がまだまだ隠れている。
創業嘉永元年(1848年)より、洛東鹿ヶ谷の地にて160年間代々続く歴史ある造園会社。文化財庭園の維持管理をはじめ、寺院庭園、別荘庭園、公共庭園の伝統技法による整備・管理とともに、各種住宅庭園の施工管理も手がける。また近年では、京都府の指定管理者として「けいはんな記念公園」の経営に携わるなど、ソフトからハードまで一貫した総合造園サービス会社としても注目されている。
TEL:075-771-3052/京都市左京区鹿ケ谷西寺ノ前町45
明治35年創業、最盛期には八千石程のお酒を製造していたという「藤岡酒造」。しかし、三代目のご不幸がきっかけとなり平成7年の“造り”を最後に酒造の歴史に幕を閉じた。そんな中「もう一度お酒を作りたい」と復活を遂げたのが5代目藤岡正章さん。現在では「蒼空」ブランドを立ち上げ、手間ひまかけた酒造りに励んでいる。
「伏見は以前に“伏水”と書いたほど良い水が豊富に湧き出る土地。その中でも当社は東から流れる白菊水において最も上流にある井戸の上質な水を使用しています。全て手造りなので多くの量は造れませんが、滑らかで優しい味を目指しています。また私が大切にしていることは作り手と飲み手の顔が見える酒造り。京都は人とのつながりを大切にする町ですからね。私が河原町にある醸造酒専門BAR「醸造庭」に訪れる時も日本酒を飲みにというより店主に会いに行く感覚です」。さらに散歩によく立ち寄るという緑溢れる「桃山御陵」。 京都は魅力的な人や自然がいっぱいだと藤岡さんは話す。
「蒼空」純米酒(500ml)1,600円〜の販売のほか、酒蔵Bar「えん」では生まれたての日本酒を仕込み蔵を眺めながらゆっくり楽しめる。また「クリームチーズの酒盗のせ」490円など、日本酒に合うちょこっとおつまみもあり。「蒼空」1杯純米酒420円、純米吟醸生酒450円。純米大吟醸酒500円。※価格は全て税別価格
TEL:075-611-4666/京都市伏見区今町672-1/11:30~18:00(酒蔵Barえん)/水曜休み
「毎年11月、顔見世興行に出演する役者の名前(まねき)看板が南座の正面に上がりますが、私の役目はそのまねきの墨を作ること。“削り墨”を巨大なすり鉢に入れ、野球のバットで滑らかになるまでするという体力勝負の仕事です」。
そんな正田さんは南座をはじめ、京都の移り変わりを見てきた貴重な存在。昔はよく寺院で遊んでいたと話す。「今でこそ京都の寺院は歴史的建造物として重宝されていますが、私にとっては生活環境の一部。子供の頃は円山公園を通ってよく将軍塚へ訪れていました」。将軍塚からの展望は京都観光の絶景スポット。今では正田さんの癒しの場となっている。
元和年間(1615~1623年)京都四條河原に公許された7つの櫓の伝統を今に伝える唯一の劇場。平成3年には内部を全面改修し、最新設備の近代劇場に。
TEL:075-561-1155/京都市東山区四条大橋東詰
昭和20年に創業し、現在では全国70店舗展開する「京菓子處鼓月」。伝統的な京菓子を提供するほか、斬新なアイデアで和菓子の概念を覆す商品を生み出すこちらにも京都人がいる。「京都には古くから続くお店がたくさんあります。当社もそうですが、何代もの人が伝統や文化を受け継ぎながらも、新しいものを作っていく。時には悩むこともありますが、それを乗り越えてお客様に美味しいものをお届けできた時は感無量ですね」。
河川敷や寺院などを少し歩けば自然が溢れ、和菓子作りのヒントがたくさんあると話す森さん。鼓月の和菓子は京都の自然や人の魅力が詰まっている。
店頭での販売のほか、奥には茶房があり、くつろぎの場としても親しまれている老舗和菓子店。歌舞伎鑑賞の帰りにも立ち寄れる。
TEL:075-533-6132/京都市東山区四条通川端東入(南座東隣)/10:00~20:00
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