最近の傾向として、クラシカルな趣を持つ品種が増えているのはうれしい限りです。その中でも「秋色のナチュレ」と呼びたい’ ナチュレ‘系の「マルベリー」と「ブロンズシェード」が持つ味わい深い煉瓦色の濃淡には、息をのむほどの美しさを覚えます。また、いかにもビオラらしい小輪の’ ヴァルー・フロステッドチョコレート‘は、冬場の紫色から春には鳶色へと移りゆく様が「貴婦人」とでも呼びたい、まことに上品な品種です。さらに’ イエス‘系の「ココナッツフロスト」と「パイナップルクラッシュ」には、絵筆で描かれたような文様があり、ソフトな色彩の花が楽しめます。ほかにも「アンティーク」という言葉が似合いそうな’ エンジェル‘系の「テラコッタ」や「ローズピコティ」、’ ミニオラ‘系では繊細なボタニカルアートのような「ハートパープル」や辛子色の「ハートアクア」など、古典的な色彩を持つ品種が19世紀の「ショーパンジーの時代」へと誘います。

　いわゆる基本色の系統で、艶やかで満ち足りた色彩が視線を引きつけます。さまざまな品種やシリーズがありますが、非常に珍しい半八重咲きのような花形で、冬場の深紅の花色が印象的なビオラ’ エンジェル・アンバーキッス‘や、晩春の強い日差しにも負けない強烈なオレンジ色を放つキ’ャッツ・オレンジ‘に代表されるパンジーの’ キャッツ‘系などは、基本色でありながら個性美にあふれた品種です。ローズ色では、ビオラの超人気シリーズである’ ビビ‘系の「ライトローズウィズブロッチ」の濃厚でコクのある発色が、パープル色では「ウインターパンジー」と呼ばれ、極寒期の開花特性に注目が集まる’ ナチュレ‘系の新色’ プラムパープル‘の温かい色が魅力的です。

　桜色や藤色などに代表されるパステルカラーは、その優しく清楚なイメージが日本人の美意識にあう永遠の人気色であり、’ クリーン・レモンイエロー‘や’ インペリアル‘系の’ ピンクシェード‘’ アプリコットシェード‘などは、発売以来親しまれているロングセラー品種です。ビオラの最新品種では、薄紫と淡いオレンジのハーモニーが「オーガンジー」の布を思わせる’ソルベ・ＹＴＴオレンジ‘や、印象派の絵画を見ているような色彩の’ エンジェル・フロステッドイエローブロッチ‘がおすすめです。春先に欲しいパステルブルー系では、草姿のバランスのよさも評判の’ ビビ・ラベンダーシェード‘や、大輪パンジーの’ インペリアル・ラベンダーシェード‘、白地にブルーというさわやかな色彩の’ ソルベ・ブルースワール‘が人気も高く好評です。

　2000年に発売された’ オルキ・ブルーシェード‘が爆発的な人気を呼んで以来わずか数年間で、フリンジ咲きは最もデコラティブなパンジーとして一つのジャンルを確立しました。重厚な「ゴブラン織」を思わせるオ’ルキ‘系の強いフリンジのフォルムは見る者に深い印象を刻みます。また情熱的な色彩の’ フラメンコ・ミックス‘や、落ち着いたブロンズ色の　’シャロンシュープリーム・フレーム‘も育ててみたい一品であり、　’カンカン・ミックス‘の中から出現するパステル調の花色は、ぜひ色別のシリーズにしてほしいものです。

　連綿と続く育種の系譜の中でも「黒色の花」は孤高で異彩な輝きを放ち、黒色ビオラのブ’ラックジャック‘などは無機質な美しささえ感じさせます。また、かわいさと艶っぽさを併せ持った’ ハニーリップ‘や、カラフルでデザイン性の高いポップアートのようなパンジーパ’ンドラ・レインボーカラーズ‘、ヒスイのような色味を帯びた不思議な花を咲かせる’ エンビー‘などは、代官山あたりでも似合いそうなエレガントな品種です。さらに少々独善的ですが、甲子園球場周辺の植栽や阪神タイガースのファンにおすすめしたい’ エンジェル・タイガーアイ‘は、黄色地に黒のストライプ模様が、プロ野球のシーズンオフの寂しさを癒やしてくれます